シスプラチン不耐の頭頸部がん患者に最善の治療選択肢は?

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/12/17

 

 シスプラチンは頭頸部がん患者にとって頼りになる化学療法であるが、ほぼ3分の1の患者はその副作用に耐えられず、治療を中止してしまう。こうした患者に対する最善のセカンドライン治療薬に関して、新たな臨床試験で驚くべき結果が示された。それは、頭頸部がんの治療において、モノクローナル抗体のセツキシマブ(商品名アービタックス)が、より新しい薬である免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブ(商品名イミフィンジ)よりも有効性が高いというものだ。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)クリニカル・トランスレーショナルリサーチ分野のLoren Mell氏らが実施したこの臨床試験の結果は、「The Lancet Oncology」に11月14日掲載された。

 Mell氏らの説明によると、頭頸部がんは比較的発生頻度の高いがんで、患者数は世界の全てのがんの中で7番目に多いという。頭頸部がんのリスク因子は、喫煙や飲酒、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染などで、口や鼻、副鼻腔、唾液腺、喉、声帯の組織に発生する可能性がある。長年にわたって頭頸部がんの最も良い治療薬はシスプラチンであると考えられてきた。しかし、30%程度の患者では、副作用の厳しさから化学療法が中止に至る。

 セツキシマブはこれまで長い間、シスプラチン不耐の患者に使用できる優れたセカンドライン治療薬と見なされてきたが、近年、別の治療選択肢としてデュルバルマブが浮上してきた。多くのがん専門医は、セツキシマブよりもデュルバルマブの方が安全性も有効性も高いのではないかと考えている。そのような考えを検証するため、Mell氏らは今回、北米の89の大学病院や地域医療センターで第2/3相多施設共同ランダム化非盲検並行群間比較試験を行った。対象とされた、186人のシスプラチン不耐の進行頭頸部扁平上皮がん患者(年齢中央値72歳、男性84%)は、放射線治療開始の2週間前と、放射線治療開始から2週目以降は4週間ごとにデュルバルマブ1,500mgを投与する群(7サイクル)、または放射線治療開始の1週間前にセツキシマブ400mg/m2、放射線治療開始から1週間目以降は毎週250mg/m2を投与する群(8サイクル)に2対1の割合で割り付けられた。

 その結果、2年無増悪生存率は、デュルバルマブ投与群(123人)での50.6%に対してセツキシマブ投与群(63人)では63.7%だった。有害事象の発生については、両群で同様であった。セツキシマブ投与群とデュルバルマブ投与群のアウトカムの差があまりにも大きかったため、Mell氏らは試験を早期に中止し、全ての患者でセツキシマブの投与に切り替えたという。

 Mell氏は「デュルバルマブに対しては、数多くの理由から楽観視する見方があったが、標準を下回る可能性もあるという結果になった」とUCSDのニュースリリースの中で話している。その上で、「標準的なシスプラチンの併用ができない患者にとって、放射線治療にセツキシマブを併用する治療が極めて良い選択肢となることが、われわれの試験で改めて示された」と述べている。

 ただ、一部のわずかな患者にとってはデュルバルマブがより良い選択肢になる可能性はある。Mell氏らによると、デュルバルマブとセツキシマブの作用の仕方にはかなり大きな違いがあり、セツキシマブはがん細胞表面のタンパク質と結合し、がん細胞の増殖を抑制するのに対し、デュルバルマブはがん細胞表面の別のタンパク質をブロックし、がん細胞が免疫系による攻撃を受けやすい状態にするという。このことを踏まえてMell氏は、「腫瘍の免疫反応性が極めて高い患者に対しては、デュルバルマブによる治療の方が有効な可能性があるとのエビデンスは残っている」とUCSDのニュースリリースの中で述べている。

[2024年11月26日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら