喘息やCOPDの増悪に対する新たな治療法とは?

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/12/11

 

 英国、バンベリー在住のGeoffrey Pointingさん(77歳)は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪がもたらす苦痛を表現するのは難しいと話す。「正直なところ、増悪が起きているときは息をすることさえ困難で、どのように感じるのかを他人に伝えるのはかなり難しい」とPointingさんはニュースリリースの中で述べている。しかし、既存の注射薬により、こうした喘息やCOPDの増悪の恐ろしさを緩和できる可能性のあることが、新たな臨床試験で示された。「The Lancet Respiratory Medicine」に11月27日掲載された同試験では、咳や喘鳴、息苦しさ、痰などの呼吸器症状の軽減という点において、モノクローナル抗体のベンラリズマブがステロイド薬のプレドニゾロンよりも優れていることが明らかになった。論文の上席著者である英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)呼吸器科のMona Bafadhel氏は、「この薬は、喘息やCOPDの患者にとってゲームチェンジャーになる可能性がある」と期待を示している。

 ベンラリズマブは、肺の炎症を促す好酸球と呼ばれる特定の白血球を標的としている。米食品医薬品局(FDA)は2017年、同薬を重症喘息の管理を目的とした薬として承認している。研究グループによると、好酸球性増悪は、COPDの急性増悪の最大30%、喘息発作の約50%を占めているという。このようなエピソードでは、肺内で好酸球を含む白血球が急増し、喘鳴、咳、胸部の圧迫感を引き起こす。このことを踏まえてBafadhel氏らは今回の臨床試験で、喘息とCOPDの発作に対するベンラリズマブの有効性を評価した。

 対象とされた158人の喘息またはCOPD患者(平均年齢57歳、男性46%)は、急性増悪時(好酸球数が300cells/μL以上)に、以下の3群にランダムに割り付けられた。1)プレドニゾロン30mgを1日1回、5日間経口投与し、ベンラリズマブ100mgを1回皮下注射する群(ベンラリズマブ+プレドニゾロン群、52人)、2)プラセボを1日1回、5日間経口投与し、ベンラリズマブ100mgを1回皮下注射する群(ベンラリズマブ群、53人)、3)プレドニゾロン30mgを1日1回、5日間経口投与し、プラセボを1回皮下注射する群(プレドニゾロン群、53人)。

 その結果、90日後の治療失敗率は、プレドニゾロン群で74%(39/53人)、ベンラリズマブ群とベンラリズマブ+プレドニゾロン群を合わせた群(統合ベンラリズマブ群)で45%(47/105人)であり、統計学的に統合ベンラリズマブ群はプレドニゾロン群よりも治療失敗率が有意に低いことが示された(オッズ比0.26、95%信頼区間0.13〜0.56、P=0.0005)。また、28日目に症状をVAS(視覚的アナログスケール)で評価したところ、統合ベンラリズマブ群がプレドニゾロン群よりも49mm(95%信頼区間14〜84mm、P=0.0065)高い改善を示し、ベンラリズマブの方が症状の改善に効果的であることが示された。いずれの群でも致死的な有害事象は発生せず、ベンラリズマブの忍容性は良好であることも確認された。

 これらの結果を受けて研究グループは、「すでに喘息の治療薬として承認されている薬が、喘息やCOPDの増悪を抑える手段としてステロイド薬に代わるものとなる可能性がある」との見方を示している。

 この臨床試験に参加したPointingさんは、ベンラリズマブは「素晴らしい薬」であると言う。「ステロイド薬の錠剤を使用していたときには副作用があり、初日の夜はよく眠れなかったが、今回の臨床試験では初日の夜から眠ることができ、何の問題もなく自分の生活を続けることができた」とPointingさんは振り返っている。

 今回の臨床試験では、医療従事者がベンラリズマブの皮下注射を行ったが、家庭や診療所でも安全に投与できる可能性があるとBafadhel氏らは話している。なお、本試験はベンラリズマブを製造するAstraZeneca社の助成を受けて行われた。

[2024年11月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら