変形性膝関節症の新たな検査法を開発

提供元:HealthDay News

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公開日:2025/01/16

 

 変形性膝関節症(OA)は、関節内の軟骨が劣化して骨同士が擦れ合うことで生じる。しかし、OAは軟骨の劣化が進行した末期段階で診断されることが多いため、それが軟骨の摩耗により生じたOA(一次性OA)なのか、あるいは炎症性疾患により生じた炎症性関節炎なのかを判断するのは難しいとされる。こうした中、関節内の潤滑液に含まれる2種類の成分を指標として用いた新たな検査法により、これら2種類の関節炎を正確に区別できる可能性のあることが明らかになった。米Zimmer Biomet社の一部門であるCD DiagnosticsのDaniel Keter氏らによるこの研究結果は、「Journal of Orthopaedic Research」に12月18日掲載された。

 研究グループによると、米国では60歳以上の成人の最大15%がOAに罹患しており、人口の高齢化や肥満などのリスク因子の増加により、OAの蔓延はさらに進むことが予想されているという。

 これまでの研究では、OA患者の患側の関節滑液では、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)と呼ばれる非コラーゲン性糖タンパク質の値が上昇していることが明らかにされている。しかし、COMP濃度だけを頼りに一次性OAと炎症性関節炎を区別することはできない。

 今回の研究でKeter氏らは、COMP濃度に加え、インターロイキン-8(IL-8)と呼ばれる炎症性化学物質の濃度を組み合わせたアルゴリズムを構築し、これにより一次性OAと炎症性関節炎を区別できるかを検討した。COMPは軟骨が破壊されるときに放出されるため、一次性OA患者の関節滑液中では濃度が高くなる傾向がある。一方、IL-8の濃度は、OAでは低いが関節リウマチなどの炎症性疾患では高くなることが知られている。

 COMP濃度およびCOMPとIL-8の濃度比率の臨床的基準値を設定し、171例の膝関節滑液標本を用いてアルゴリズムの性能を評価した。その結果、このアルゴリズムは、感度87.0%、特異度88.9%という高い精度で一次性OAと炎症性関節炎を区別することが示された。

 こうした結果を受けて研究グループは、「一次性OAを他の炎症性関節炎と区別することは、OAの正確で的を絞った治療を可能にする、より優れた診断に貢献する」と結論付けている。またKeter氏は、「この検査は、OAの客観的な診断に対するアンメットニーズに対応し、臨床上の意思決定と患者の転帰改善に寄与する」と述べている。

 ただし研究グループは、「この検査が広く使用されるようになる前に、その有効性を検証する必要がある」と述べている。

[2024年12月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら