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飲食店メニューのカロリー表示は摂食障害の患者にとって有害

飲食店のメニューに、来客の健康に配慮してカロリーが表示されていることがあるが、そのような情報は摂食障害の患者にとってはかえって有害ではないかとする論文が、「BMJ Public Health」に1月29日掲載された。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のTom Jewell氏らが行ったシステマティックレビューに基づく検討の結果であり、摂食障害患者の場合、カロリー表示を見ることが非健康的な信念の強化や飲食店の利用を避けるという行動につながり得るという。
世界的な肥満人口増大への対策の一つとして、飲食店メニューへの含有カロリー併記を義務化する国が増えている。これは当然ながら、食べ過ぎを防ぐための情報として提供されるものだが、一方で摂食障害の患者に対してこうした施策が悪影響を及ぼす懸念も指摘されている。Jewell氏らはこの点について、システマティックレビューを行った。
この研究では、システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に準拠して、MEDLINE、Embase、APA PsycINFO、Web of Science、CINAHLほか計8件の文献データベースを用いた査読済み論文、および、Google ScholarとPsyArXivを用いた査読前論文を検索した。2人の研究者が独立してスクリーニング等を行い、最終的に16件(研究対象者数は合計8,074人)の研究報告を抽出した。
論文の上席著者であるJewell氏は、それらの報告に基づくメタ統合(質的検討)の結果として、「摂食障害のある人々が、カロリー表示を推進するという施策の蚊帳の外に置かれていることに、不満を抱いていることが浮き彫りにされた」と総括している。そして、肥満の蔓延によって、政策立案者が摂食障害患者への影響という点に、全く配慮せずに物事を推し進めている現状の問題を指摘。「公衆衛生政策としては本来、カロリー表示のプラスの側面とマイナスの側面のバランスを取ることが極めて重要だ」と述べている。
この研究で明らかになったカロリー表示のマイナスの側面として、例えば、摂食障害患者はメニューに併記されているカロリー表示を特に重視する傾向が認められ、その情報を無視することは困難であることが示された。ある研究の参加者は、「表示を見ることで、カロリーを過剰に意識するようになる。自分の体が膨らんでいく様子が頭に浮かび、不快に感じる」と語っていた。
別の研究では、カロリー表示のために、仲間同士の会話がダイエットの話題になってしまうことへの不快感を訴える患者が報告されていた。「同席している人たちに、カロリーの話はやめてほしいと頼まなければならず、気まずい雰囲気になってしまう。そして、私は食事に誘われなくなっていく」と回答した患者もいた。また、「カロリー表示のために疾患の回復が確実に遅くなった。今では家庭内での食事しか安心できない」と話す患者の報告もあった。
論文の筆頭著者であるKCLのNora Trompeter氏は、「政策立案の際、通常は肥満人口の削減に有効かどうかという点に焦点が当てられるが、採択しようとしている政策が摂食障害を持つ人々に、意図しない害を及ぼしている可能性を念頭に置くことも重要である。カロリー表示が摂食障害患者に与える影響をより深く理解するために、さらなる研究が求められる」と述べている。
[2025年1月31日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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