第4回医療事故に係る調査のあり方に関する検討部会感想文

提供元:MRIC by 医療ガバナンス学会

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公開日:2012/06/27

 


医療制度研究会
中澤 堅次

2012年6月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

 この文章の目的は、医療事故調査制度に関心を持たれている人たちに、問題を共有していただくことで、中澤の個人的な感想として書かせていただいています。代表する団体がなく、どのような資格で参加したのか自分でもわかりませんが、個別の診療に責任を持ってきた一臨床医としての立場で、皆様のご意見をいただき、具体化が進む議論の参考にさせていただきたいと思います。

第4回はささえあい医療人権センターCOML理事長山口育子氏のプレゼンから始まり、そのあとでいよいよ、事故調の目的、対象と範囲、調査を行う組織というようにテーマを絞って決めてゆく段階になりました。次回は7月26日に開催予定です。

1)山口育子氏の発表

山口理事長の発表は、家族の声が反映されるので、実態に即した分析が行われ、今後議論の核になるポイントを良くおさえていると思いました。

家族の不信の原因は、説明不足など情報の共有がなされていないことや、医療者の態度と対応にまずさがある。家族が求めることは、真相究明、謝罪、賠償、処分、再発防止であり、現行制度では訴訟以外に訴え出るところがなく、納得のゆく第三者の説明を求めている。山口氏がイメージする第三者は、公的で地域格差がなく、迅速な対応が得られ、手続きが簡単な、専門的で多角的で、臨床経験者による検証が望まれる。また、患者側にわかりやすい説明が出来る説明者が必要で、検討の結果を現場にフィードバックできる組織を求めており、調査は双方からの申し出により始まり、死亡だけに限定されない組織を考えているとの内容でした。その他、医療の不確実さ、専門性、幅の広さなどが要求され簡単ではないことにも触れています。問題の本質をつかんでおり良い発表と思いました。

質疑では、不満の解消に院内調査の重要性が議論され、大方は共通した方向性になりましたが、原告団を代表する立場で参加されている豊田氏からは、院内調査には技術的に限界があるとの意見がだされていました。

2)本題の討論

1.目的について

院内調査重視の小生と、第三者機関重視の樋口氏では目的の認識も異なりましたが、大方の意見は、目的は原因究明と再発防止でした。また原因究明は目的ではなく手段だという認識もあり、目的は再発防止だという点で一致していました。小生は被害を受けた人の希望に沿って、補償と再発防止だと主張しましたが、補償の考えはほかの委員には重視されず、取り上げられませんでした。

処分が目的という議論が表面に出ないので、処分と再発防止は両立しないことをはっきりさせるために、産科医療補償制度を例にとって説明したところ、多くのメンバーが産科医療補償制度の設立にかかわっており、事実認識の相違と反論が小生に集中しました。弁護士の加藤氏と宮澤氏から具体的な説明がされ、報告書は公正なものであり、司法判断に事実上使われるのは仕方がないという意見だったので、それが問題であることを伝えました。同じく制度設立にかかわった飯田氏は同じ意見を出したが受け入れられなかったことを述べられ、看護協会代表の松月氏からも、看護師が処分の対象になっていることに対する懸念が出されました。

2.対象範囲について

対象は死亡例に限り、発展的には死亡例以外に広げるというのが大方の意見です。第三次試案では院長に課せらた強制的な届出によるケースが対象でしたが、家族または医療者が届け出たケースが基本になるということで異論がないようでした。小生としては、犯罪死と故意の疑われる事故死は対象としないことを確認する必要があると思っていますが、目的が再発防止に絞られたので意見を出すチャンスがありませんでした。

3.調査を行う組織について

小生を除きすべての構成員は第三者組織を作るという意見で、小生にいいかと確認されましたので、今の段階で決めずに、議論が進んだ後でもう一度振り返りの議論を認めてもらうことをお願いしました。そして第三者機関が出来るとしても、その場合は司法と行政からは独立したものでなくてはならないことを強調しておきました。今後第三者を作るということを軸に議論は進むと思われます。

MRIC by 医療ガバナンス学会