ワクチン接種時の幼児に対する解熱薬のルーチンな予防投与は推奨されない

提供元:ケアネット

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公開日:2009/10/29

 



幼児に対するワクチン接種時のパラセタモール(別名アセトアミノフェン)の予防投与により、発熱の発症率は有意に低減するものの、ワクチン抗原に対する抗体反応を減弱させる場合があることがわかった。チェコ共和国・防衛大学陸軍保健科学部のRoman Prymula氏らの検討で判明したもので、同氏は「それゆえ、パラセタモールのルーチンの予防投与は推奨されない」としている。発熱はワクチン接種後の正常な炎症反応の一種だが、高熱や熱性痙攣の緩和を目的に解熱薬の予防投与が推奨されることがあるという。Lancet誌2009年10月17日号掲載の報告。

パラセタモールの予防投与群と非予防投与群を比較する無作為化試験




研究グループは、パラセタモールの予防投与がワクチン接種時の幼児の発熱やワクチン反応に及ぼす影響を評価する無作為化対照比較試験を実施した。

チェコ共和国の10施設から459人の健常な幼児(登録時:生後9~16週、追加接種時:生後12~15ヵ月)が登録され、ワクチン接種後24時間以内に6~8時間毎にパラセタモールを3回予防投与する群(226人)あるいは同薬剤の予防投与を行わない群(233人)に無作為に割り付けられた。

主要評価項目は38℃以上の発熱の解熱効果とし、副次評価項目は免疫原性の獲得とした。

予防投与群で、いくつかのワクチン抗原における抗体価の幾何平均値が有意に低下




両群とも発熱が39.5℃を超える例はまれであった[初回接種時:予防投与群<1%(1/226人)、非予防投与群1%(3/233人)、追加接種時:予防投与群2%(3/178人)、非予防投与群1%(2/172人)]。

少なくとも1回のワクチン接種後に38℃以上の発熱が見られた幼児は、予防投与群[初回接種時:42%(94/226人)、追加接種時:36%(64/178人)]が、非予防投与群[初回接種時:66%(154/233人)、追加接種時:58%(100/172人)]よりも、有意に少なかった。

初回接種後の抗体価の幾何平均値(geometric mean concentration; GMC)は、10種の肺炎球菌ワクチンの血清型、抗ジフテリア抗体、抗破傷風抗体などで、予防投与群が非予防投与群よりも有意に低かった。追加接種後も、非予防投与群に比べ予防投与群で、全肺炎球菌ワクチン血清型、抗破傷風抗体、抗ジフテリア抗体の低い抗体価GMCが持続していた。

著者は、「ワクチン接種時の解熱薬の予防投与により発熱をきたす幼児は有意に少なくなったが、いくつかのワクチン抗原に対する抗体反応を減弱させるため、ルーチンの予防投与は推奨すべきでない」と結論している。

(菅野守:医学ライター)