新たな白癬菌抗原キットの保険収載、爪白癬に対する経口抗真菌薬のエビデンスの蓄積、耐性株の出現などを背景に、6年ぶりの改訂版となる「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」が2025年12月に公開された。ガイドライン策定委員会の委員長を務めた福田 知雄氏(埼玉医科大学総合医療センター)に、改訂のポイントと実臨床での活用について話を聞いた。
足白癬・爪白癬の患者数は70代にピーク、80代以上の患者が増加
現在、日本人の7人に1人が足白癬、13人に1人が爪白癬に罹患していると推測される。このデータは16年ぶりに実施された足白癬・爪白癬の潜在罹患率調査(Foot Check 2023)
1)によるもので、前回調査(Foot Check 2007)と比較すると減少傾向にある。この減少については、2023年の調査がより厳しい確定診断の条件を課していたことによる影響、新規抗真菌薬の治療効果により潜在罹患率が減少した可能性が考えられるという。
また、5年ごとに実施される全国調査の最新結果(2021年)
2)では、足白癬・爪白癬の患者数はともに70代にピークがみられ、80代以上の足白癬患者は前回調査と比較して12.1%から16.7%に、爪白癬患者は17.6%から21.9%へ増加している。福田氏は、同調査結果のこれまでの経年変化をみても、足白癬・爪白癬ともに患者の高齢化傾向が続いていると指摘した。
新たな白癬菌抗原キットの使いどころ
2022年、新たな白癬菌抗原キット(商品名:デルマクイック爪白癬)が保険収載された。同キットは、抽出液で爪甲中の白癬菌抗原を抽出し、免疫クロマトグラフィーの原理で検体中の白癬菌抗原を検出するもの。福田氏は「真菌検査の主軸はKOH直接顕鏡と真菌培養であることに変わりはない」とし、ガイドラインでも同キットはKOH直接鏡検の補助検査として位置付けられている。
KOH直接顕鏡は簡便で繰り返し検査可能な優れた検査であるが、経験豊富な医師では検出率が高くなる一方、不慣れな医師の場合は検出率が低くなる傾向がある。福田氏は、「同キットは検体採取の熟練度や菌の特性によらず検出が可能なため、併用することで不慣れな医師は誤診を減らすことができ、経験豊富な医師にとっても偽陰性を防ぐために活用できる」と話した。顕微鏡のない施設や訪問診療などでも、迅速なスクリーニングのための活用が期待される。
爪白癬へのイトラコナゾールは推奨度Bに、ホスラブコナゾールはエビデンス増
爪白癬に対する内服薬として、前版ではテルビナフィン、イトラコナゾール、ホスラブコナゾールの3剤がいずれも推奨度A(行うよう強く勧める)と判定されていた。3剤を直接比較したデータはないものの、テルビナフィンとの比較においてイトラコナゾールはやや有効性が劣るという報告があること、併用禁忌・併用注意薬が非常に多いことから、今回は推奨度B(行うよう勧める)に引き下げられた。
2018年に発売されたホスラブコナゾールについては、前版発行後にいくつかのリアルワールドデータが報告され、いずれも臨床試験と同等あるいは上回る有効率が確認された。75歳以上の高齢者を対象とした試験、難治性・再発症例への追加投与・再投与について検討した試験においても有効性と安全性が確認されている。福田氏は、「他の薬剤にもいえることだが、推奨期間の投与を終えても治癒しない症例がある。ホスラブコナゾールの場合、12週の投与で治癒が期待できる症例は6割程度とされる。治りきらない症例においてどのような対応をすればよいのかがエビデンスとして示された点は大きい」と話す。テルビナフィンとの比較においては、薬価が大きく異なる点にも留意が必要となる。
内服可能な症例には、まず内服薬でしっかり治すことが原則
現在爪白癬に対する外用薬として選択できる2剤については、ともに有効率は15%前後とされるが、実臨床では外用薬が優先して使われている。外用薬はリスクが低く使いやすいが、有効率は内服薬のほうが明確に高いことが示されており、福田氏は「外用薬と内服薬どちらも投与可能な患者さんに対しては、まず内服薬を使うことを推奨したい」と話した。ただし、高齢患者が増えている中で、多剤併用の観点などから外用薬を選択するケースもあるとし、「外用薬で治療を開始して、治癒が得られなかった場合に内服薬に切り替えるという選択もありえる」とした。
ペット由来など、近年注意が必要な原因菌
現状、耐性株の出現率は日本では低く、実臨床では1~3%と推定される。注意が必要なのはテルビナフィンに対する耐性株だが、アゾール系(イトラコナゾール、ホスラブコナゾール)に対する耐性株も今後出てくる可能性はあり、福田氏はその可能性を認識しておくことが重要とした。今回のガイドラインでは各CQで耐性株に対するコメントも記載されている。
原因菌に関して、近年分類法が変更・精度が向上し、名称や分類が一部変更されている。今回のガイドラインでは、「留意すべき皮膚真菌症」として以下の4項目について記載が追加された。
1.動物から感染する皮膚真菌症
ペットの多様化などにより、ヒトからヒトへの感染だけでなく、動物からの感染もあるということを認識しておく必要がある。
例:ペットのデグーに由来する
Trichophyton benhamiae var. luteum、ネコからの
Sporothrix globosaなど(本邦での報告はなし)
2.Trichophyton tonsurans感染症
本邦では2000年頃より柔道、レスリングなどの格闘技選手間での集団発生が多発した。近年報告症例は減少しているものの、撲滅はできていない。
3.耐性菌の中心となる可能性のあるTrichophyton indotineae
本邦に在留中のインド人の体部白癬から分離された。海外で安価で入手されるステロイド外用薬と抗真菌薬、抗菌薬配合のOTC外用薬の乱用が感染拡大に関与している可能性が指摘されており、本邦でも
Trichophyton indotineaeによる体部白癬を繰り返す症例の報告が徐々に増加している。
4.死亡率の高い侵襲性医療関連感染症を引き起こすCandida auris
本邦で見つかった株だが、世界的に急速に拡大している。現在は本邦では少数ではあるが分離はされており、認識しておく必要がある。
(ケアネット 遊佐 なつみ)