肺がんは米国において、がん死亡の主要な要因である。ステージI、IIの非小細胞肺がんでは、切除術が治癒の信頼性が高い唯一の方法であり、切除しない人の生存期間中央値は1年に満たない。しかし、早期肺がん患者の切除術実施率は低いのが現状で、特に黒人での実施率が低いという。米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校のSamuel Cykert氏らは、修正可能な手術に関する因子を特定し、なぜ黒人で特に実施率が低い理由を明らかにするため、400人超を対象とする前向きコホート試験を行った。JAMA誌2010年6月16日号掲載より。
黒人の実施率は白人より11ポイント低率
同氏らは、2005年12月~2008年12月にかけて、生検で確定または可能性が高いと判断された新規早期肺がん患者437人のうち、386人を対象に試験を行った。被験者の年齢は26~90歳で、中央値は66歳、また29%が黒人だった。
その結果、診断後4ヵ月以内に手術を行ったのは、白人は66%(179/273人)だったのに対し、黒人は55%(62/113人)で、黒人で有意に低率だった(p=0.05)。
がんについての医師とのコミュニケーションが悪いほど、切除術の実施率は下がり、コミュニケーション指標25ポイントで5ポイント下がることによる、切除術の実施に関するオッズ比は0.42(95%信頼区間:0.32~0.74)だった。
黒人で二つ以上の共存症があると実施率は0.04倍に
術後1年後の予後予測が悪いとの患者の認識も、切除術の実施率が低いことと関連(オッズ比:0.27、同:0.14~0.50、絶対リスク差:34%)していた。
黒人の切除術実施率は、二つ以上の共存症があった場合13%で、そうでない場合の62%と比べ、大幅に低率だった(オッズ比:0.04、同:0.01~0.25、絶対リスク差:49%)。また、黒人で普段医療ケアを受けられない状態だった人は切除術実施率が42%と、通常医療ケアを受けられた人の57%に比べ、低率だった(オッズ比:0.20、同:0.10~0.43、絶対リスク差:15%)。
研究グループは、手術拒否の決定要因として、コミュニケーションや予後に対する患者の認識、高齢であること、黒人であることが独立した因子であることが明らかになったとして、至適手術実施のためにも、これら因子を考慮する必要があると結論している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)