非選択的NSAID、選択的COX-2阻害薬が、心房細動/粗動リスクを増大

提供元:ケアネット

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公開日:2011/07/22

 

 非選択的NSAIDの使用によって心房細動/粗動のリスクが増大することが、デンマーク・Aarhus大学病院のMorten Schmidt氏らの検討で示され、BMJ誌2011年7月9日号(オンライン版2011年7月4日号)で報告された。NSAIDは世界で最も広範に使用されている薬剤の1つであり、新世代の選択的COX-2阻害薬は消化管毒性を改善したNSAIDとして開発された。一方、心房細動は一般診療で最も高頻度にみられる持続性の心調律障害だが、NSAIDは腎臓への有害作用を介して心房細動のリスクを増大させる可能性が示唆されている。NSAIDの使用や心房細動の発生率は加齢とともに増加するため、その関連性は特に高齢者の治療で大きな関心事となっているという。

デンマーク北部における10年間の地域住民ベースの症例対照研究

 研究グループは、非選択的NSAID(イブプロフェン、ナプロキセンなど)および選択的COX-2阻害薬(ジクロフェナク、エトドラク、セレコキシブなど)の心房細動/粗動リスクへの影響を検討するために、データベースを用いた地域住民ベースの症例対照研究を行った。

 デンマーク北部地域(人口170万人)において、1999~2008年までに新規に心房細動/粗動の診断を受けた入院および外来患者3万2,602人と、年齢および性別をマッチさせリスク集団サンプリング(risk-set sampling)で抽出した対照群32万5,918人を比較した。

 受診時のNSAID使用者を「現使用者」、以前に使用歴のある者は「使用経験者」とし、前者はさらに「新規使用者(診断日前60日以内に初処方)」と「長期使用者(診断日前60日以前に初処方)」に分けた。条件付きロジスティック回帰モデルで算出したオッズ比から罹患率比(incidence rate ratio)を推算した。

新規使用者でリスクが40~70%増大

 非選択的NSAIDあるいは選択的COX-2阻害薬のいずれかの現使用者は、症例群が2,925人(9%)、対照群は2万1,871人(7%)であった。

 非使用者(対照群)との比較における非選択的NSAID現使用者の心房細動/粗動の罹患率比は1.33(95%信頼区間:1.26~1.41)であり、選択的COX-2阻害薬の現使用者の罹患率比は1.50(同:1.42~1.59)であった。年齢、性別、心房細動/粗動のリスク因子で調整すると、非選択的NSAID現使用者の心房細動/粗動の罹患率比は1.17(同:1.10~1.24)、選択的COX-2阻害薬の罹患率比は1.27(同:1.20~1.34)にまで低下した。

 新規使用者の調整罹患率比は、非選択的NSAIDが1.46(95%信頼区間:1.33~1.62)、選択的COX-2阻害薬が1.71(同:1.56~1.88)であった。個々のNSAIDの罹患率比に差はみられなかった。

 著者は、「非選択的NSAIDの使用によって心房細動/粗動のリスクが増大していた。特に新規使用者では40~70%もの増大が確認された」と結論し、「NSAIDを処方する際に考慮すべき心血管リスクに、心房細動/粗動を加える必要があることを示すエビデンスが得られた」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)