未治療のHIV-1感染成人患者に対するHIV治療薬として、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)rilpivirineが新たな治療オプションとなり得ることが示された。同一クラスのエファビレンツ(商品名:ストックリン)に対する非劣性を検討した第3相無作為化試験の結果による。本論は、米国・Community Research Initiative of New England(ボストン)のCalvin J Cohen氏らによる、全被験者がヌクレオシド系またはヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)レジメンも同時に受けていることを前提に行われた「THRIVE」試験の結果報告で、主要アウトカムとした48週時点でのrilpivirineの非劣性が認められ、安全性も良好であったという。Lancet誌2011年7月16日号掲載報告より。
NRTIレジメンを受けた患者をrilpivirine群もしくはエファビレンツ群に無作為化
THRIVE試験は、96週にわたる第3相無作為化二重盲検二重ダミー非劣性試験で、21ヵ国98医療施設から被験者を募って行われた。
被験者は、18歳以上成人で抗レトロウイルス治療を受けたことがなく、スクリーニングで血漿ウイルス量5,000コピー/mL以上、NRTIに対するウイルス感度を有する患者とし、コンピュータシステムを使って1対1の割合で、rilpivirine群(25mgを1日1回)とエファビレンツ群(600mgを1日1回)に無作為化された。また全患者が、治験参加医師の選択により、いずれかのNRTIレジメン[テノホビル ジソプロキシルフマル酸(商品名:ビリアード)+エムトリシタビン(同:エムトリバ)、ジドブジン(同:レトロビル)+ラミブジン(同:エピビル)、アバカビル(同:ザイアジェン)+ラミブジン]を受けた。
主要アウトカムは、全患者が治験薬を1回以上投与され反応が確認(ウイルス量<50コピー/mL、ウイルス学的失敗がintention-to-treat解析で確認)された48週時点の非劣性(ロジスティック回帰分析のマージン12%)とした。
48週時点の有効性、rilpivirine群86%、エファビレンツ群82%
2008年5月から947例がスクリーニングを受け、主要アウトカム検証のためにデータを打ち切った2010年1月までに340例が登録された。
結果、1回以上投与での反応(ウイルス量<50コピー/mL)が認められたのはrilpivirine群86%(291/340例)、エファビレンツ群82%(276/338例)であり、両群差3.5%(95%信頼区間:1.7~8.8)でrilpivirine群の非劣性(p<0.0001)が認められた。
基線から48週までのCD4細胞数増大は、両群でほぼ同等であった(rilpivirine群:189個/μL、エファビレンツ群:171個/μL、p=0.09)。
一方、ウイルス学的失敗率はrilpivirine群7%、エファビレンツ群5%であった。
投与中止となった有害事象の発生は、rilpivirine群4%、エファビレンツ群7%であった。治療関連のグレード2~4の有害事象は、rilpivirine群のほうが少なかった(rilpivirine群16%、エファビレンツ群31%、p<0.0001)。特に、発疹とめまいが少なかった(いずれもp<0.0001)。また、血漿脂質の増大が、エファビレンツ群に比べrilpivirine群のほうが有意に低かった(p<0.0001)。
Cohen氏は、「ウイルス学的失敗はわずかに多かったが、rilpivirineはエファビレンツに比し、良好な安全性、有効性については非劣性であることが示され、未治療のHIV-1感染患者に対する新たな治療の選択肢と成り得るであろう」と結論している。
(朝田哲明:医療ライター)