葉酸摂取量が、MTHFR遺伝子変異によるホモシステイン濃度増加に影響

提供元:ケアネット

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公開日:2011/08/25

 



脳卒中の予防におけるホモシステイン低下療法は、葉酸摂取量が多い地域ではベネフィットがないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMichael V Holmes氏らの検討で確認された。MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)遺伝子の677C→T変異は血清ホモシステイン濃度の増加や脳卒中リスクの上昇と関連を示す。その影響は低葉酸食を摂取する地域で高いことが報告されているが、葉酸の効果と小規模試験バイアスを区別するのは難しいとされる。無作為化試験のメタ解析では、ホモシステイン低下療法による冠動脈心疾患や脳卒中の抑制効果は確認されていないが、これらの試験は一般に葉酸摂取量の多い集団を対象にしているという。Lancet誌2011年8月13日号(オンライン版2011年8月1日号)掲載の報告。

葉酸摂取の影響を、遺伝子解析と無作為化試験のメタ解析で評価




研究グループは、葉酸の摂取状況がMTHFR遺伝子677C→T多型と脳卒中の関連に及ぼす影響を、遺伝子解析および無作為化対照比較試験のメタ解析によって検討した。

5万9,995人のホモシステインのデータと2万885件の脳卒中イベントを含む237のデータセットについて遺伝子解析を行った。得られた知見を、ホモシステイン低下療法と脳卒中リスクに関する13の無作為化試験のメタ解析(4万5,549人、脳卒中イベント2,314件、一過性脳虚血発作269件)の結果と比較した。

MTHFR遺伝子変異がホモシステイン濃度に及ぼす影響は、葉酸低摂取地域のアジアで大きい




MTHFR遺伝子677C→T変異が血清ホモシステイン濃度に及ぼす影響は、葉酸摂取量の少ないアジア地域[common alleleのホモ接合体(CC型)に対するrare alleleのホモ接合体(TT型)の血清ホモシステイン濃度の増分:3.12μmol/L、95%信頼区間:2.23~4.01]のほうが、摂取量の多いアメリカ、ニュージーランド、オーストラリア地域(同:0.13μmol/L、-0.85~1.11)に比べて大きかった。

脳卒中リスクのオッズ比も、アジア地域は1.68(95%信頼区間:1.44~1.97)であり、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア地域の1.03(同:0.84~1.25)に比べて高かった。無作為化試験のほとんどが、葉酸濃度が高い集団あるいは上昇傾向にある集団の居住地域で実施されていた。

ホモシステイン低下療法を検討した試験における脳卒中の相対リスク(0.94、95%信頼区間:0.85~1.04)は、葉酸摂取状況が類似する集団を対象とした大規模な遺伝子解析でホモシステイン低下の程度から予測された相対リスク(1.00、同:0.90~1.11)と同等であった。

これに比べ、葉酸低摂取地域(アジア)における大規模な遺伝子解析から予測されたホモシステイン低下療法の脳卒中予防効果はより大きかった(相対リスク:0.78、95%信頼区間:0.68~0.90)が、ホモシステイン低下療法が脳卒中のリスクに及ぼす影響を葉酸低摂取地域に限定して評価した試験はなかった。

著者は、「遺伝子解析の結果は、葉酸摂取量が多い地域では脳卒中の予防におけるホモシステイン低下療法のベネフィットはないとするメタ解析の知見と一致した」と結論し、「葉酸の効果を確立するには、より大規模な遺伝子解析において葉酸低摂取状態でのMTHFR遺伝子677C→T変異と脳卒中の関係を評価する必要があり、ホモシステイン低下療法の脳卒中予防効果を葉酸低摂取地域で検討する無作為化試験を行うべき」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)