リビング・ウィルが終末期医療費を抑制、院内死亡を低下、ホスピス利用を増大:米国

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2011/10/18

 



終末期の医療行為を特定のものに制限する事前指示書「リビング・ウィル」と米国終末期医療費、治療内容との関連を調べた結果、同費用が高い地域において同指示書があることは費用の有意な低下と関連していることが報告された。また、同費用が中程度~高い地域における院内死亡率の低下やホスピス利用の増大も認められたという。米国・ミシガン大学のLauren Hersch Nicholas氏らが、約3,300人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月5日号で発表した。

終末期医療費が高い地域で、リビング・ウィルにより約5,600ドル有意に低下




研究グループは、1998~2007年に死亡した65歳以上のメディケア加入者で、前向きに調査データが収集されていたHealth and Retirement Study被験者3,302人について、メディケア保険請求データと全米死亡統計(National Death Index)に基づき分析を行った。

死亡者の入院先地域で照会したメディケア支払額ごとに、リビング・ウィルと終末期医療費、治療内容との関連について多変量回帰モデルを用いて解析した。主要評価項目は、死亡前半年間のメディケア医療費、延命治療、ホスピス・ケア、病院死亡率とされた。

結果、終末期医療費が高い地域では、リビング・ウィルのない人の1人当たり終末期医療費の予測平均値が3万9,518ドルだったのに対し、リビング・ウィルのある人の同医療費の補正後予測平均値は3万3,933ドルと、5,585ドル低かった(95%信頼区間:-1万903~-267、p=0.04)。

一方、終末期医療費が低い地域と中程度の地域では、リビング・ウィルの有無による終末期医療費の補正後予測平均値に有意差は認められなかった。

終末期医療費が中程度~高い地域、院内死亡が低下、ホスピス入所が増大




またリビング・ウィルは、終末期医療費が中程度~高い地域において、補正後院内死亡率予測値の低下と関連していた。同医療費中程度の地域は-5.3ポイント低下(95%信頼区間:-10~-0.4)、高い地域では-9.8ポイント低下していた(同:-16~-3)。

さらにリビング・ウィルは、終末期医療費が中程度~高い地域において、補正後ホスピス入所率予測値の増大と関連していた。同医療費中程度の地域で11ポイント増(同:6~16)、高い地域で17ポイント増(同:11~23)だった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)