複雑な冠動脈疾患の血行再建術の選択について、解剖学的な複雑さを考慮しただけのSYNTAXスコアよりも、同スコアに左室駆出率などの臨床因子を加えたSYNTAXスコアIIが有効であることが報告された。オランダ・エラスムス大学メディカルセンターのVasim Farooq氏らが行った試験で明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2013年2月23日号で発表した。SYNTAXスコアは、欧米のガイドラインで至適な血行再建術選択ツールとして提唱されているが、予測能に限界があることが指摘されていた。そこで同研究グループは、8つの予測因子から成るSYNTAXスコアIIを開発し検証試験を行った。
SYNTAXスコアにベースライン時の臨床因子などを追加
研究グループは、1,800人を対象に行った無作為化試験「SYNTAX試験」の結果を基に、4年死亡率との関連が強かったベースライン時の臨床因子などをSYNTAXスコアに加えたSYNTAXスコアIIを開発した。
SYNTAXスコアIIについて、冠動脈バイパス術(CABG)と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行った場合の4年死亡率の差の予測能を調べ、従来のSYNTAXスコアと比較した。
外的妥当性の検証は、CABGまたはPCIを行った多国籍の被験者2,891人を対象としたDELTAレジストリにて行った。
SYNTAXスコアIIのC統計量、内的・外的妥当性いずれも0.7強
SYNTAXスコアIIに盛り込まれた予測因子は、解剖学的SYNTAXスコア、年齢、クレアチニンクリアランス、左室駆出率(LVEF)、非保護左冠動脈主幹部病変(ULMCA)、末梢血管疾患、女性、慢性閉塞性肺疾患(COPD)だった。
試験の結果、SYNTAXスコアIIは、CABGとPCIを行った患者の4年死亡率の差を有意に予測した(p=0.0037)。CABGまたはPCIを受けた人が同等の4年死亡率を達成するには、年齢が若く、女性であり、LVEFが低い人ではより解剖学的SYNTAXスコアが低いことが必要だった。一方で、高年齢でULMCAとCOPDがある人は、解剖学的SYNTAXスコアは高い必要があった。
糖尿病の有無は、CABGとPCIの選択においては重要ではなかった(p=0.67)。
SYNTAXスコアIIのSYNTAX試験による内的妥当性の結果は、C統計量0.725であり、DELTAレジストリによる外的妥当性では、C統計量0.716であった。これらは従来のSYNTAXスコアの各値0.567、0.612に比べ、いずれも有意に高値だった。
著者は、「複雑な冠動脈疾患患者の4年死亡率は、SYNTAXスコアIIによる予測のほうが良好であり、CABGかPCIかの意思決定に優れている可能性がある」と結論している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)