鉄剤の静注投与は、ヘモグロビン濃度を増大し、同種異系の赤血球輸血リスクを低下して急性期治療を要する幅広い場面で適用可能だが、一方で感染リスクの増大もあり、その潜在的有効性は相殺されてしまうことが明らかにされた。オーストラリア・王立パース病院のEdward Litton氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。急性期の患者に対し赤血球輸血は有用だが関連有害事象、コストや不足に対する懸念が増加している。一方で鉄剤の静注投与は、鉄欠乏性貧血患者のヘモグロビン濃度を増大するのに有効であることは明らかであったが、その他の重大有害事象との関連や感染リスクについては不明であった。BMJ誌オンライン版2013年8月15日号掲載の報告より。
ヘモグロビン変化、輸血リスクと感染リスクをシステマティックレビューとメタ解析
レビューと解析は、鉄剤静注投与の有効性と安全性を評価していた無作為化試験を対象とし、主にヘモグロビン、輸血条件、感染リスクに焦点を当てることを目的とした。
Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsをデータソースに、1966年から2013年6月の間の論文を言語を問わず検索した。鉄剤静注と非鉄剤または鉄剤経口投与とを比較した試験を適格とし、クロスオーバー試験、観察試験は除外した。
主要評価項目は、ヘモグロビン濃度の変化、同種異系赤血球輸血のリスク(有効性の評価として)、感染リスク(安全性の評価として)であった。
赤血球輸血リスク0.74倍、一方で感染リスク1.33倍
適格条件を満たした試験は75件であった。そのうち72件、患者1万605例の定量的アウトカムデータをメタ解析に組み込んで評価した。
解析の結果、鉄剤静注は、ヘモグロビン濃度の増大(標準化平均差:6.5g/L、95%信頼区間[CI]:5.1~7.9g/L)、および赤血球輸血リスクの減少(リスク比:0.74、95%CI:0.62~0.88)と関連していた。とくに、ESA製剤使用患者やベースライン時の血清フェリチン値が低い患者に使用した場合に関連が有意であった。
鉄剤静注の有効性について、投与タイプおよび用量との間に有意な相互作用はみられなかった。しかし感染リスクについては、経口投与あるいは鉄剤を投与しない場合と比較して有意な増大がみられた(相対リスク:1.33、95%CI:1.10~1.64)。同様の結果は、試験の質が高いものだけを対象に解析した場合も変わらなかった。