直接第Xa因子阻害薬エドキサバン(商品名:リクシアナ)は、心房細動(AF)患者における脳卒中の予防効果がワルファリンに劣らず、出血リスクが有意に低いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のRobert P. Giugliano氏らが実施したENGAGE AF-TIMI 48試験で示された。エドキサバンは、活性化血液凝固第Xa因子を可逆的かつ直接的に阻害する経口薬であり、1~2時間で最高血中濃度に達し50%が腎で排泄される。すでに、8,000例以上の急性静脈血栓塞栓症患者を対象とした第III相試験(Hokusai-VTE試験)において、再発予防効果がワルファリンに劣らず、出血の発症率が有意に低いことが確認されている。本研究は、米国心臓協会学術集会(AHA)で発表され、NEJM誌オンライン版2013年11月19日号に掲載された。
2種類の用量の非劣性を無作為化試験で評価
ENGAGE AF-TIMI 48試験は、AF患者の脳卒中予防におけるエドキサバンの長期的な有効性と安全性をワルファリンとの比較において評価する二重盲検ダブルダミー無作為化試験。対象は、年齢21歳以上、割り付け前の1年以内にAFを発症し、中等度~重度の脳卒中リスク(CHADS
2スコア≧2)を有し、抗凝固療法が予定されている患者であった。
これらの患者が、ワルファリン(INR:2.0~3.0)、エドキサバン60mg/日、同30mg/日を投与する群に無作為に割り付けられた。
有効性の主要エンドポイントは脳卒中または全身性塞栓症の発症とし、エドキサバンのワルファリンに対する非劣性(ハザード比[HR]の97.5%信頼区間[CI]の上限値が1.38を超えない)を評価した。安全性の主要エンドポイントは大出血の発現であった。
脳卒中/全身性塞栓症:1.50 vs 1.18 vs 1.61%、大出血:3.43 vs 2.75 vs 1.61%
2008年11月19日~2010年11月22日までに、46ヵ国1,393施設から2万1,105例が登録された。ワルファリン群に7,036例(年齢中央値72歳、女性37.5%、CHADS
2スコア4~6:22.6%)、エドキサバン高用量群に7,035例(72歳、37.9%、22.9%)、エドキサバン低用量群には7,034例(72歳、38.8%、22.2%)が割り付けられた。ワルファリン群の治療期間中のINR治療域内時間(TTR)の割合(中央値)は68.4%と良好だった。フォローアップ期間中央値は2.8年。
脳卒中または全身性塞栓症の年間発生率は、ワルファリン群の1.50%に対し、エドキサバン高用量群が1.18%(HR:0.79、97.5%CI:0.63~0.99、非劣性検定:p<0.001)、低用量群は1.61%(1.07、0.87~1.31、p=0.005)であり、2つの用量ともにワルファリン群に対し非劣性であった。有効性のITT解析では、エドキサバン高用量群はワルファリン群よりも良好な傾向が認められ(HR:0.87、97.5%CI:0.73~1.04、p=0.08)、低用量群は不良な傾向がみられた(1.13、0.96~1.34、p=0.10)。
大出血の年間発生率は、ワルファリン群の3.43%に比べ、エドキサバン高用量群が2.75%(HR:0.80、95%CI:0.71~0.91、p<0.001)、低用量群は1.61%(0.47、0.41~0.55、p<0.001)であり、2つの用量ともにワルファリン群に対する優越性が示された。
心血管死の年間発生率は、ワルファリン群の3.17%に対し、エドキサバン高用量群が2.74%(HR:0.86、95%CI:0.77~0.97、p=0.01)、低用量群は2.71%(0.85、0.76~0.96、p=0.008)であり、いずれもワルファリンに比べ有意に良好であった。また、主要な副次エンドポイント(脳卒中、全身性塞栓症、心血管死)の発生率は、ワルファリン群の4.43%に比べ、高用量群は3.85%(HR:0.87、95%CI:0.78~0.96、p=0.005)と有意に優れたが、低用量群は4.23%(0.95、0.86~1.05、p=0.32)であり、有意差は認めなかった。
著者は、「エドキサバンの2つのレジメンはいずれも、脳卒中および全身性塞栓症の予防効果がワルファリンに劣らず、出血および心血管死が有意に少なかった」とまとめ、「エドキサバンの投与中止後のイベント発生数は少なく、凝固活性のリバウンドの可能性は低いことが示唆される」としている。
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(医学ライター 菅野 守)