慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者へのβ遮断薬治療は、気道けいれんを誘発する可能性があるため原則禁忌とされているが、心筋梗塞後の生存率を有意に増大することが、英国住民ベースのコホート研究の結果、明らかにされた。死亡ハザード比は、心筋梗塞発症前から服用していた患者で0.59、発症入院時に服用を開始した患者では0.50と、いずれの時期に開始した場合でも生存率の増加と関連していた。β遮断薬は心筋梗塞後の死亡および再発リスクを低下し、COPD患者にも有益であるとのエビデンスは積み上がってきているが、同患者への使用は制限され続けている。今回の結果を踏まえて著者は「処方されないことが同患者の心筋梗塞後の死亡を増大している可能性があり、われわれの知見は、心筋梗塞後のCOPD患者にβ遮断薬がより広く使用されなければならないことを示唆するものであった」とまとめている。BMJ誌オンライン版2013年11月22日号掲載の報告より。
初発MIのCOPD患者、β遮断薬治療有無・開始時期と生存の関連を調査
本検討は、心筋梗塞(MI)初発のCOPD患者について、β遮断薬処方の有無および治療開始時期が生存と関連しているかどうかを調べること、また関連の規定因子を明らかにすることを目的とするものであった。
2003~2011年の英国MIレジストリ(Myocardial Ischaemia National Audit Project:MINAP)とGeneral Practice Research Database(GPRD)を結びつけ、電子カルテ記録を基に分析を行った。
被験者は、2003年1月1日~2008年12月31日に初発MIがMINAPに記録されたCOPD患者で、GPRDまたはMINAPにMI既往の記録がなかった患者だった。
主要評価項目は、β遮断薬処方有無別のCOPD患者におけるMI発症後の、死亡に関するCoxハザード比(HR)(年齢、性別、喫煙状態、服薬状況、併存疾患、MIタイプ、梗塞重症度などの共変量で補正)だった。
退院日からのフォローアップ開始でも入院時処方開始と同程度の保護効果
解析には1,063例が組み込まれた。そのうち、β遮断薬の非処方患者は586例(55.1%)、MI発症前から処方を受けていたのは244例(23.0%)、MI入院時に処方が開始されたのは233例(21.9%)だった。
結果、追跡期間中央値2.9年において、MI入院時処方開始群において、有意に大幅な生存ベネフィットがあることが認められた(完全補正後HR:0.50、95%信頼区間[CI]:0.36~0.69、p<0.001)。また、MI発症前処方開始群でも、有意な生存ベネフィットが認められた(同:0.59、0.44~0.79、p<0.001)。これらの処方有無間の差は、傾向スコア分析でも同様の結果が得られた。
また、退院日からフォローアップを開始した場合でも、エフェクトサイズはわずかに減弱したものの、入院時処方開始と同程度の保護効果がみられた(同:0.64、0.44~0.94、p=0.02)。