米国では、1964年以降に実施されたタバコ規制により、800万人の早期死亡が回避され、平均寿命が約20年延長したと推定されることが、イェール大学公衆衛生大学院のTheodore R. Holford氏らの検討で示された。2014年1月は、米国で最初の喫煙と健康に関する公衆衛生局長官報告から50周年に当たる。同報告の影響力は大きく、喫煙による損失の低減に向け、政府や非政府組織(NGO)、民間企業によるさまざま取り組みを呼び起こした。JAMA誌2014年1月8日号掲載の報告。
実際の調査データと、規制がないとした場合の推定データを比較
研究グループは、1964年以降に実施されたタバコ規制との関連において、喫煙関連死低減のモデルの確立を目的とする調査を行った。
出生時期が同じコホートにおいて、実際の喫煙状況を調査し、タバコ規制が実施されなかった場合のシナリオに基づく喫煙状況を推定した。喫煙の死亡に及ぼす影響を分析した研究から得られた全国的な推定死亡率および死亡率比を用いて、喫煙状況別の死亡率を算出した。
1964~2012年の喫煙状況に関する聞き取り調査のデータに基づいて実際の喫煙関連死亡率を算出し、タバコ規制がないとした場合の推定死亡率との比較を行った。主要評価項目は早期死亡の回避数および救済生存年数とし、全般的な健康アウトカムの指標として、喫煙量の変化に伴う40歳時の余命の変化の評価を行った。
規制により40歳時の余命が約30%延長
1964~2012年における喫煙関連死亡数は1,770万人と推定された。これは、タバコ規制が実施されなかったとした場合の喫煙関連の早期死亡数よりも800万人(男性530万人、女性270万人)少なく、タバコ規制の成果と考えられた。
タバコ規制により救済された総生存年数は1億5,700万年(男性1億1,100万年、女性4,600万年)で、平均19.6年と推定された。40歳時の平均余命は男性が7.8年、女性は5.4年延長し、そのうちそれぞれ2.3年(30%)、1.6年(29%)がタバコ規制によると推算された。
著者は、「タバコの規制により、800万人の早期死亡が回避され、平均寿命が19~20年延長したと推察される」とまとめ、「タバコ規制は公衆衛生学的に重要な成果を挙げているが、今後も、全国的な死亡者数に及ぼす喫煙の影響の低減に向けた努力を継続する必要がある」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)