中等度~重度の閉塞性睡眠時無呼吸の治療法として、新たに開発された植込み型の上気道刺激デバイスが有用であることが、米国・ピッツバーグ大学医療センター・モンテフィオーリ病院のPatrick J. Strollo氏らが実施したSTAR試験で示された。閉塞性睡眠時無呼吸に対しては、持続的気道陽圧法(CPAP)が健康リスクを軽減することが確認されているが、治療へのアドヒアランスが十分でないと効果は低くなる。中等度以上の患者ではCPAPの施行が困難な場合が多い。NEJM誌2014年1月9日号掲載の報告。
前向き単群コホート試験と無作為化対照比較試験で評価
STAR(Stimulation Therapy for Apnea Reduction)試験は、閉塞性睡眠時無呼吸に対する植込み型デバイスによる上気道刺激の臨床的な安全性と有効性を、プロスペクティブに評価する多施設共同単群コホート試験。対象は、CPAPの施行が困難な中等度~重度の閉塞性睡眠時無呼吸の患者であった。
デバイスは、神経刺激装置を手術的に右鎖骨下部に留置し、刺激リード線を介して舌下神経へ電気的刺激パルスを送り、睡眠中の換気努力と同期させるというもの。
主要評価項目は12ヵ月後の無呼吸・低呼吸指数(AHI)および酸素飽和度低下指数(ODI)とし、副次評価項目はエプワース眠気尺度(ESS)、睡眠の機能的転帰質問票(FOSQ)、睡眠時の酸素飽和度(SaO
2)が90%未満の時間の割合とした。12ヵ月後の評価で有効と判定された患者が、治療継続群と治療中止群の無作為化対照比較試験に登録された。
全評価項目が改善、治療中止により症状増悪
2010年11月10日~2013年3月23日までに126例が登録された。男性が83%、平均年齢が54.5歳、平均BMIは28.4であった。
12ヵ月後のAHIスコア中央値は9.0回/時であり、ベースラインの29.3回/時に比べ68%低下した(p<0.001)。また、ODIスコア中央値は7.4回/時であり、ベースラインの25.4回/時に比し70%低下した(p<0.001)。
FOSQスコア中央値はベースラインの14.6点から12ヵ月後には18.2点(p<0.001)へ、ESSスコア中央値は11.0点から6.0点(p<0.001)、睡眠時SaO
2<90%の時間の割合の中央値は5.4%から0.9%(p=0.01)へと、いずれも有意に改善した。
無作為化試験には有効例46例が登録された。治療継続群に23例、治療中止群にも23例が割り付けられ、1週間後に評価が行われた。12ヵ月時(無作為化試験開始時)の平均AHIスコアおよび平均ODIスコアは両群で同等であった。
平均AHIスコアは、治療中止群では12ヵ月時の7.6回/時から1週間後には25.8回/時へ有意に上昇した(p<0.001)のに対し、治療継続群は12ヵ月時が7.2回/時、1週間後も8.9回/時と有意な変化は認めなかった。平均ODIスコアも同様に、治療中止群では12ヵ月時の6.0回/時から1週間後には23.0回/時へ有意に増悪したのに対し、治療継続群は12ヵ月時が6.3回/時、1週間後も8.0回/時と良好な状態が維持されていた。
重篤なデバイス関連有害事象が2例に認められ、不快感を解消するために神経刺激装置の再留置を要した。植え込み術とは関連のない重篤な有害事象が33件認められた。植え込み術関連の非重篤な有害事象のほとんどが30日以内に起きており、挿管による咽頭痛、切開部疼痛、筋肉痛などの予期された術後イベントであった。手技に関連した重篤な有害事象は2%未満であった。
結果を踏まえて著者は、「植込み型上気道刺激デバイスは、中等度~重度の閉塞性睡眠時無呼吸患者の症状を客観的および主観的に有意に改善し、有害事象の発現は許容範囲であった」とまとめ、「CPAPの施行が困難な患者を未治療のまま放置すると心血管合併症や死亡のリスクが著明に増大するため、このようなデバイスの開発は重要と考えられる」としている。
(菅野守:医学ライター)