破裂性腹部大動脈瘤に対する開腹手術 vs. 血管内修復術/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2014/01/22

 

 破裂性腹部大動脈瘤に対する治療戦略について、血管内治療と外科治療では30日死亡率低下およびコストに差がないことが、無作為化試験の結果、示された。同治療戦略について検討する英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJanet T Powell氏らのIMPROVE試験研究グループが、30施設・613例について検討した結果、報告した。これまで選択的患者を対象とした英国内単施設の検討では、血管内治療が外科治療よりも30日死亡率が約30%低いことが示されていたが、他の施設や他国の多施設で行われた試験では、いずれも小規模試験だが両者間の違いは示されなかった。BMJ誌オンライン版2014年1月13日号掲載の報告より。

30施設・613例を対象に血管内修復術vs.開腹修復術
 本検討実施の背景には、先行研究での対象のように破裂性腹部大動脈瘤が常にステントグラフト内挿術(endovascular aneurysm repair;EVAR)適応の形態を有してはいないこと、また同施術を常時提供するには人的・物的整備が必要で、現状では多くの施設がその基準を満たせないことなどがあった。

 IMPROVE(Immediate Management of Patients with Rupture: Open Versus Endovascular repair)無作為化試験では、破裂性腹部大動脈瘤が疑われる患者について、血管内治療(形態が適切な場合に施行し、不適な場合は外科治療に切り替える)vs. 外科治療の、術後早期死亡の低下について検討した。

 2009~2013年に、30施設(英国29、カナダ1)にて613例(うち男性480例)を対象に行われた。被験者は無作為に、316例が血管内治療を受ける群に(275例が破裂性腹部大動脈瘤と確認、血管内治療適応は174例)、297例が外科治療を受ける群に(261例が確認例)割り付けられた。

 主要アウトカムは30日死亡率。また、24時間死亡率、院内死亡率、入院コスト・期間、退院先などを副次アウトカムとした。

30日死亡率に有意差なし、医療コストの有意な削減効果もみられず
 結果、30日死亡率は、血管内治療群35.4%(112/316例)、外科治療群37.4%(111/297例)であった。オッズ比は、補正前0.92(95%信頼区間[CI]:0.66~1.28、p=0.62)、補正後(年齢、性、Hardman index)0.94(同:0.67~1.33、p=0.73)で両群間に有意差はみられなかった。

 性別にみたオッズ比は、女性が0.44(同:0.22~0.91)に対し、男性は1.18(0.80~1.75)で、女性のほうが男性よりも血管内治療を受けるベネフィットがみられた(相互作用検定p=0.02)。

 破裂性と確認された患者の30日死亡率は、血管内治療群36.4%(100/275例)、外科治療群40.6%(106/261例)で、有意差はみられなかった(p=0.31)。

 24時間死亡率については補正前オッズ比1.15であり、院内死亡率は30日死亡率と同程度だった(オッッズ比:0.92)。一方で平均期間は血管内治療群で短く(9.8日vs. 12.2日)、退院先について、自宅に直接退院できた人が同群で有意に多かった(94%対77%、p<0.001)。しかしは医療コストの有意な削減効果はみられなかった。血管内治療群の削減コスト(30日間の平均値)は1,186ポンド(1,939ドル)であった。

 著者は、「血管内治療の治療戦略は30日死亡率や医療コストを有意に削減しなかった」とまとめたうえで、「より長期にわたる費用対効果の検討で、同戦略の完全な評価を男女ともに行う必要がある」と指摘している。

(武藤まき:医療ライター)

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コメンテーター : 中澤 達( なかざわ たつ ) 氏

社会福祉法人 聖母会 聖母病院 院長

J-CLEAR評議員