ペントラキシン3(PTX3)の遺伝的欠損は好中球の抗真菌能に影響を及ぼし、造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者における侵襲性アスペルギルス症(Aspergillus fumigatus)のリスクに関与している可能性があることが、イタリア・ペルージャ大学のCristina Cunha氏らの検討で示された。液性パターン認識受容体は、長いタイプのPTX3として知られ、抗真菌免疫において代替不可能な役割を果たすとされる。一方、侵襲性アスペルギルス症の発現におけるPTX3の一塩基多型(SNP)の関与はこれまでに明らかにされていない。NEJM誌2014年1月30日号掲載の報告。
PTX3 SNPをスクリーニングし、その機能的転帰を検討
研究グループは、HSCTを受けた患者268例(
A. fumigatus群51例、非
A. fumigatus群217例)とそのドナーのコホートにおいて、侵襲性アスペルギルス症のリスクに影響を及ぼす
PTX3のSNPのスクリーニングを行った(discovery study)。
また、侵襲性アスペルギルス症患者107例およびこれらの患者とマッチさせた対照223例に関して、多施設共同研究を実施した(confirmation study)。
in vitroとレシピエントの肺検体で
PTX3 SNPの機能的転帰について検討した。
ホモ接合型ハプロタイプおよび発現欠損ドナーからの移植で感染リスク上昇
PTX3がホモ接合型ハプロタイプ(h2/h2)のドナーから移植を受けたレシピエントは感染リスクが上昇することが、discovery study(累積発生率:37 vs. 15%、補正ハザード比[HR]:3.08、p=0.003)およびconfirmation study(補正オッズ比[OR]:2.78、p=0.03)の双方で確認された。PTX3の発現が欠損しているドナーからの移植の場合も同様の結果であった。
機能的には、メッセンジャーRNAの不安定性によると推察されるh2/h2好中球のPTX3欠損により、貪食能と真菌のクリアランスが障害されることが示された。
著者は、「PTX3の遺伝的欠損は好中球の抗真菌能に影響を及ぼし、この欠損はHSCTを受けた患者において侵襲性アスペルギルス症を起こしやすくしている可能性がある」とまとめ、「これらの知見は、
A. fumigatusに対する宿主防御におけるPTX3の代替不可能な役割を支持するもの」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)