健康な人における食物繊維の豊富な摂取は、冠動脈疾患の低リスクと関連しているが、心筋梗塞後の患者でも同様のベネフィットがあることが明らかにされた。米国・ハーバード公衆衛生大学院のShanshan Li氏らが行った大規模前向きコホート研究の結果、摂取量が多いほど、全死因死亡と逆相関の関連が認められたという。とくに穀物由来の食物繊維の摂取量を心筋梗塞前よりも増やすことが、全死因死亡および心血管死亡の有意な低下と関連していたことも明らかにされた。これまで、心筋梗塞後に食物繊維の摂取量を増やすことが、死亡率の低下と関連しているかは不明であった。BMJ誌オンライン版2014年4月29日号掲載の報告より。
心筋梗塞後の食物繊維摂取量と全死因死亡、心血管死亡との関連を分析
本研究は、米国の男女が参加し食事量についてもデータがあった「看護師健康調査」(女性、1976年開始、参加者年齢30~55歳)と「医療従事者追跡調査」(男性、1986年、40~75歳)の、2つの大規模前向きコホート研究の参加者を対象に行われた。
参加者のうち、登録時に心血管疾患、脳卒中、がんを有していなかった人で追跡期間中に心筋梗塞を発症し生存していた人(脳卒中なし)、かつ心筋梗塞前後の食物繊維摂取の頻度についての質問記録がある人を対象とした。
主要評価項目は、心筋梗塞前後の摂取量の変化と全死因死亡および心血管死亡との関連で、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。モデルは、投与薬、治療歴、ライフスタイル因子で補正した。
追跡期間は女性32年間、男性22年間だった。その間に心筋梗塞(MI)を発症しその前後の食物繊維摂取量の記録があったのは、男性1,840例、女性2,258例。MI後の追跡期間中央値は、男性9.0年、女性8.7年だった。MI後追跡期間中の死亡は、女性は総計682例(心血管死亡336例)、男性は451例(222例)だった。
食物繊維摂取量との関連は、MI後の摂取量についてそれぞれ五分位範囲に分類して分析が行われた。
摂取量五分位範囲最高位群の全死因死亡ハザード比は0.75、穀物繊維が最も有益
結果、MI後の食物繊維摂取量が高いほど、全死因死亡が有意に低い関連が認められた。五分位最低位群と比べて最高位群の、男女を合わせたプール多変量補正後ハザード比は0.75(95%信頼区間[CI]:0.58~0.97、p=0.03)だった。心血管死亡も低下がみられたが有意ではなかった(同ハザード比:0.87、95%CI:0.60~1.24、p=0.46)。
食物繊維のタイプ別(穀物、果物、野菜)でみると、穀物タイプが、摂取量と全死因死亡、心血管死亡との逆相関の関連が最も強かった。
これらの有意差は、BMI、身体活動度、血糖値や、アスピリンまたは脂質低下薬の服用などで補正後も影響はみられなかった。
また、MI後の摂取量増大が、全死因死亡の低下(同ハザード比:0.69、95%CI:0.55~0.87、p=0.002)、および心血管死亡の低下(同:0.65、0.47~0.90、p=0.01)と有意に関連していることも認められた。