潰瘍性大腸炎の新たな抗体製剤、臨床的寛解率達成/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2014/05/28

 

 抗α4β7/αEβ7インテグリン抗体エトロリズマブ(etrolizumab)は、潰瘍性大腸炎の治療において良好な臨床的寛解率をもたらし、忍容性も優れることが、ベルギー・ルーベン大学のSeverine Vermeire氏らの検討で明らかとなった。潰瘍性大腸炎は腸管内の微生物抗原に対する異常な免疫応答で特徴づけられる慢性炎症性疾患である。α4β7インテグリンとそのリガンドであるMAdCAM-1の相互作用を阻害することで、免疫細胞の腸への移動が阻止され、潰瘍性大腸炎やクローン病の治療法として有効であることが示されている。本薬は、α4β7およびαEβ7インテグリンのヘテロダイマーのβ7サブユニットに選択的に結合するヒト化モノクローナル抗体である。Lancet誌オンライン版2014年5月9日号掲載の報告。

2種類の用量の有用性をプラセボ対照第II相試験で評価
 研究グループは、中等度~重度の活動性潰瘍性大腸炎に対するエトロリズマブの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照第II相試験を行った。対象は、年齢18~75歳、従来の治療が無効であり、Mayo Clinicスコア(MCS、スコアが高いほど疾患活動性が高度)が5以上(FDAの要請によりアメリカのみ6以上)、病変が肛門縁から25cm以上に及ぶ患者であった。

 これらの患者を、0、4、8週にエトロリズマブ100mgを投与し、2週にはプラセボを投与する群(100mg群)、負荷用量として0週に420mgを投与後、2、4、8週に300mgを投与する群(300mg群)またはプラセボ群に1:1:1の割合で無作為に割り付けた。

 主要評価項目は治療10週時の臨床的寛解率とし、副次評価項目は6週時の臨床的寛解率および6週、10週時の臨床的奏効率などであった。臨床的寛解の定義は、MCS≦2点で、各サブスコアが≦1点の場合であり、臨床的奏効はMCSの3点以上かつ30%以上の減少+直腸出血サブスコアの1点以上の減少またはスコアが≦1点の場合とした。

100mg群の臨床的寛解率は10週時21%
 2011年9月2日~2012年7月11日までに11ヵ国40施設から124例が登録され、エトロリズマブ100mg群に41例、300mg群に40例、プラセボ群には43例が割り付けられた。プラセボ群で年齢が若く、男性が少なく、メサラジンの併用頻度が高く、100mg群で体重が重かったが、これ以外の患者背景は3群間で類似していた。なお、有効性の評価は119例(100mg群39例、300mg群39例、プラセボ群41例)で可能であった。

 10週時の臨床的寛解率は、プラセボ群が0%であったのに対し、エトロリズマブ100mg群は21%(8/39例、p=0.0040)、300mg群は10%(4/39例、p=0.048)であり、有意な差が認められた(プラセボ群との比較)。6週時の臨床的寛解率はそれぞれ5%、10%、8%で有意差はみられなかった。

 6週時の臨床的奏効率は、プラセボ群が34%、エトロリズマブ100mg群が49%、300mg群は38%であり、有意差は認めなかった。また、10週時の臨床的奏効率は、それぞれ29%、33%、31%であり、有意差はなかった。

 有害事象の発現率は、プラセボ群が72%(31/43例)であり、そのうち重篤な有害事象が12%(5例)に認められた。エトロリズマブ100mg群での発現率はそれぞれ61%(25/41例)、12%(5例)、300mg群では48%(19/40例)、5%(2例)であった。エトロリズマブ100mg群で皮疹、インフルエンザ様症状、関節痛の頻度が高かったが、いずれも軽度~中等度であった。

 著者は、「エトロリズマブはプラセボに比べ良好な臨床的寛解率を達成し、忍容性も優れていた」とまとめ、「α4β7およびαEβ7インテグリンの双方を遮断するアプローチは、潰瘍性大腸炎の治療法として有効と考えられる。長期的な有用性を検討する第III相試験を計画中である」としている。

(医学ライター:菅野守)

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コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員