化学療法を受けておらずアンドロゲン除去療法後に進行がみられた転移性前立腺がん患者に対し、経口アンドロゲン受容体阻害薬エンザルタミドは、増悪および死亡のリスクを有意に低下し、化学療法の開始を有意に延長したことが示された。米国・オレゴン健康科学大学のTomasz M Beer氏らによる第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果で、試験は当初計画した中間解析後に、試験薬の有益性が示されたとして早期終了となった。エンザルタミドは、転移性去勢抵抗性前立腺がん患者で化学療法後の進行例に対し生存を延長することは確認されていた。NEJM誌オンライン版2014年6月1日号掲載の報告より。
経口アンドロゲン受容体阻害薬vs. プラセボ、1,717例対象に無作為化試験
研究グループは、化学療法を選択せずアンドロゲン除去療法を選択したが無効であった患者への新たな治療選択の確立を目的に、同患者にエンザルタミドを投与しその有効性と安全性を検討する試験を行った。
被験者は2010年9月~2012年9月に世界207施設で1,717例が登録され、エンザルタミド(160mgを1日1回、872例)またはプラセボ(845例)を投与する群に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、X線画像診断による無増悪生存と全生存の共同エンドポイントで、計画では約516例の死亡発生後に中間解析を行う予定になっていた。
計画通り死亡540例が報告された時点(データカットオフ2013年9月16日)で中間解析を行った結果、エンザルタミド群の有益性が確認され、試験は早期に終了となった。
進行リスクを81%低下、死亡リスクは29%低下
追跡期間12ヵ月時点で、X線画像診断による無増悪生存が確認された患者は、エンザルタミド群65%、プラセボ群14%で、エンザルタミドによる81%の進行リスク低下が認められた(エンザルタミド群のハザード比[HR]:0.19、95%信頼区間[CI]:0.15~0.23、p<0.001)。
データカットオフ時の生存は、エンザルタミド群626例(72%)、プラセボ群532例(63%)で、エンザルタミドによる29%の死亡リスク低下が認められた(エンザルタミド群のHR:0.71、95%CI:0.60~0.84、p<0.001)。
エンザルタミドの有益性は、すべての副次エンドポイントでも認められた。すなわち、細胞毒性化学療法開始までの期間(HR:0.35)、初発の骨格系関連事象までの期間(同:0.72)、軟部組織奏効(59%vs. 5%)、前立腺特異抗原(PSA)増悪までの期間(HR:0.17)、PSA値50%以上低下達成割合(78%vs. 3%)であった(すべての比較のp<0.001)。
エンザルタミド治療に関連した、頻度の高い臨床関連有害事象は、倦怠感と高血圧だった。
(武藤まき:医療ライター)