転移性腸膵神経内分泌腫瘍に対し、ソマトスタチンアナログ製剤のランレオチドは無増悪生存期間を有意に延長したことが、英国のロイヤル・フリー病院Martyn E. Caplin氏らによる国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告された。ソマトスタチンアナログ製剤は、神経内分泌腫瘍でホルモン過剰分泌関連症状の治療に用いられることが多い(日本では、商品名ソマチュリンが先端巨大症・下垂体性巨人症を適応症として承認されている)。しかし、その抗腫瘍効果のデータは限定的なものであった。神経内分泌腫瘍は稀少な疾患で、米国における年間発生例は10万人に5例の頻度であるという。NEJM誌2014年7月17日号掲載の報告より。
無増悪生存期間を主要エンドポイントにランレオチドvs. プラセボを検討
試験は、進行した高分化型または中分化型で非機能性、グレード1または2(腫瘍増殖指数[Ki-67抗原染色による]<10%)のソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍を有する患者を対象に行った。腫瘍は膵臓、中腸または後腸由来、もしくは原発不明であった。
研究グループは患者を無作為に、ランレオチドの徐放性水性ゲル製剤Autogel(米国でデポ剤として知られる)120mgもしくはプラセボを投与する群に割り付け、28日間に1回投与を96週間(24ヵ月間、最大24回投与)にわたって行った。
主要エンドポイントは無増悪生存期間で、増悪(固形がん効果判定基準[RECIST] ver.1.0による)または死亡までの期間と定義した。副次エンドポイントは、全生存期間、QOL(欧州がん研究・治療機構[EORTC]質問票QLQ-C30およびQLQ-GI.NET21で評価)、安全性などであった。
ランレオチド群の進行または死亡のハザード比0.47
試験には、2006年6月~2013年4月に14ヵ国(欧州12ヵ国、米国、インド)48施設(2次、3次医療施設)で204例が登録された。被験者は、ランレオチド群に101例、プラセボ群に103例が無作為に割り付けられた。大半の患者(96%)は、無作為化前3~6ヵ月において腫瘍の進行はみられなかった。なお、33%の患者が肝腫瘍量が25%超だった。
試験薬曝露期間の中央値は、ランレオチド群24.0ヵ月、プラセボ群15.0ヵ月であった。
増悪が認められたのはプラセボ群58例、ランレオチド群30例、死亡はそれぞれ2例ずつで、主要エンドポイントの無増悪生存期間は、ランレオチド群がプラセボ群と比べて有意に延長した(中央値未到達vs. 18ヵ月、層別化log-rank検定のp<0.001、進行または死亡のハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.30~0.73)。
24ヵ月時点の推定無増悪生存率は、ランレオチド群65.1%(95%CI:54.0~74.1%)、プラセボ群33.0%(同:23.0~43.3%)であった。
事前規定のサブグループ(腫瘍部位別、グレード別、肝腫瘍量別)の治療効果は、信頼区間が広範であった小規模のサブグループを除けば、全体集団の治療効果とおおむね一致していた。
QOLや全生存については、治療群間で有意差はみられなかった。
最も頻度が高かった治療関連の有害事象は、下痢であった(ランレオチド群26% vs.プラセボ群9%)。