HIV新規感染、介入方法で15万人の差/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2014/08/08

 

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染予防活動は、ある広い地域全体に画一的に提供するのではなく、個々の地域の疫学的・地理的状況に合わせ、集中的に実施したほうが、同じ予算内でより大きな予防効果が期待できることが報告された。英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのSarah-Jane Anderson氏らが、数理モデルを用いて行った分析で明らかにした。アフリカ諸国間の疫学的データにはかなりのバラツキがあることから、活動の介入を一定地域と感染リスクの高い集団に集中することで、費用対効果が改善するのではと仮定し本検討を行った。Lancet誌2014年7月19日号掲載の報告より。

ケニアを対象にケーススタディ
 研究グループは、ケニアを対象にケーススタディを行った。
 数理モデルをつくり、HIVの流行と、地域ごとの地理的・行動学的違いなどについて予測した。また、感染予防のための介入として、男性の包皮切除術や行動学的変化を促す教育、早期抗ウイルス療法の実施、曝露前予防について、一定予算内で全体に画一的に提供した場合と、地域の状況に応じて個別に集中的に提供した場合の、それぞれの予防効果を比較した。

予防活動の集中的配分で、HIV感染者は最大で15万人減少
 結果、HIV予防の介入を画一的に資源配分し実施した場合、15年間で新たな感染者を40%減少できることがわかった。一方この介入を、その土地独特の疫学的パターンを反映した形で、特定地域に集中して資源投入した場合、費用を増額することなく、15年間で効果をさらに14%増大できることが示された。具体的には、毎年のHIV感染者は33%減少する計算だという。

 介入方法の違いによる15年間の新規HIV感染者数の累計格差は、介入に費やす総額によって異なるものの、最大で15万人(22%)に上ると予測された。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)