薬物依存症患者に対して、電話を使った1回の動機付け面接といった簡易介入(brief intervention)では、通常のケアと比べて効果は期待できないことが、無作為化比較試験の結果、明らかにされた。米国・ワシントン大学のPeter Roy-Byrne氏らが、無保険者などへのセーフティネットとして機能する公的なプライマリ・ケア機関の利用患者868例を対象に行った試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「簡易介入を、セーフティネットを活用して大規模に行う方法には注意が必要であることを示す結果だった」とまとめている。JAMA誌8月6日号で発表した。
動機付け面接とパンフレットの手渡し、10分の電話フォローアップ
研究グループは2009年4月~2012年9月にかけて、ワシントン州内の無保険者などのセーフティネットとして機能する公的病院関連の診療所7ヵ所の待合室で、過去90日以内に違法薬物などの使用があると認めた18歳以上について試験を開始した。
試験参加の同意が得られた868例を無作為に2群に分け、一方には1回の簡易介入を(435例)、もう一方には通常のケアを行った(433例)。具体的に介入群では、動機付け面接、薬物依存スクリーニングアンケート(DAST-10)の結果とそれに関するパンフレット、薬物依存に関して有用な連絡先リストの手渡し、2週間以内に約10分間の電話によるフォローアップを行った。対照群には、DAST-10に関するパンフレットと同じ連絡先リストを渡した。
主要評価項目は、自己報告による過去30日間の問題のある薬物使用と、薬物依存重症度指標であるAddiction Severity Index–Lite(ASI)Drug Useの総合スコアだった。
薬物使用日数、薬物依存重症度指標ともに両群で同等
ベースライン時点における、最も問題の多い薬物の使用平均日数は、介入群が14.40日(SD:11.29)、対照群は13.25日(同:10.69)だった。
試験開始後3ヵ月時点での同平均日数は、介入群11.87日(同:12.13)、対照群9.84日(同:10.64)と、両群で同等だった。
また、ASI Drug Use総合スコア平均値についても、ベースライン時では介入群および対照群ともに0.11(同:0.10)。3ヵ月時点でも、介入群0.10(同:0.09)、対照群0.09(同:0.09)で、同等だった。
12ヵ月後についても、両群で有意差はなかった。緊急救命室や外来の利用など副次評価項目についても有意な差がある項目はなかった。
薬物使用日数、薬物依存重症度指標ともに両群で同等