経皮的冠血行再建術に用いる薬剤溶出ステントについて、新型の極薄タイプの生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステントの安全性、有効性の試験結果が報告された。スイス・ベルン大学病院のThomas Pilgrim氏らによる、耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステントとの比較で検討した無作為化単盲検非劣性試験BIOSCIENCEで、12ヵ月時点の安全性・有効性複合アウトカムは非劣性であることが示された。試験集団は、除外基準最小で、2剤併用抗血小板療法のアドヒアランスが高い(80%超)患者集団であった。また事前規定のサブグループ解析で、ST上昇型心筋梗塞患者における顕著な有益性がみられたが、著者はその点についてはさらなる検討が必要であるとしている。Lancet誌オンライン版2014年9月1日号掲載の報告より。
12ヵ月時点の標的病変不全を評価
検討は2012年2月24日~2013年5月22日にスイスの9施設にて、18歳以上の慢性安定冠動脈疾患または急性冠症候群の患者を対象に行われた。被験者は1対1の割合で、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を新型の生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステントまたは耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステントで受ける群に割り付けられた。試験に用いられた新型ステントは、「ORSIRO」(スイス、バイオトロニック社製)で、コバルトクロム合金製のストラット厚60μmという特徴を有する。
無作為化は、中央Webベースシステムで行われ、ST上昇型心筋梗塞の有無で層別化もされた。割り付けについて患者とアウトカム評価者には知らされなかったが、治療担当医にはマスキングはされなかった。
主要エンドポイントは、12ヵ月時点の標的病変不全で、心臓死・標的血管心筋梗塞・標的病変血行再建の複合とした。非劣性のマージンは3.5%と定義し、intention to treat分析にて評価した。
ST上昇型心筋梗塞患者では有意なアウトカム改善
2,119例(治療病変3,139個)の患者が無作為に、生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステント(1,063例、1,594病変)または耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステント(1,056例、1,545病変)に割り付けられた。ST上昇型心筋梗塞患者は407例(19%)であった(各群211例、196例)。
結果、12ヵ月時点の標的病変不全発生について、シロリムス溶出ステント群(69例、6.5%)は、エベロリムス溶出ステント群(70例、6.6%)に非劣性であることが示された(絶対リスク差:-0.14%、95%信頼区間[CI]上限値:1.97%、非劣性のp<0.0004)。
確認されたステント血栓の発生率については、有意差はみられなかった(9例[0.9%]対4例[0.4%]、発生率比[RR]:2.26、95%CI:0.70~7.33、p=0.16)。
事前規定の主要エンドポイントの層別化解析で、ST上昇型心筋梗塞患者のサブグループにおいて、シロリムス溶出ステント群はエベロリムス溶出ステント群よりもアウトカムの改善が認められた(7例[3.3%]対17例[8.7%]、RR:0.38、95%CI:0.16~0.91、p=0.024、相互作用のp=0.014)。