米国・マサチューセッツ総合病院のSekar Kathiresan氏らMyocardial Infarction Genetics Consortium Investigatorsは、エゼチミブ(商品名:ゼチーア)のLDLコレステロール(LDL-C)値低下作用に関わるNiemann-Pick C1-like 1(NPC1L1)タンパク質に着目し、同タンパク質を不活化する突然変異遺伝子を有している人と有していない人を比較した。結果、前者のほうがLDL-C値および冠動脈疾患リスクとの関連が、いずれも有意に低かったことが判明したという。NEJM誌オンライン版2014年11月12日号掲載の報告より。
NPC1L1不活化突然変異遺伝子キャリアの冠動脈疾患患者を特定して関連を分析
エゼチミブはNPC1L1活性を抑制することでLDL-C値を低下するが、そのような抑制作用が冠動脈疾患リスクの低下と関連しているのかについては明らかになっていない。研究グループはエゼチミブの潜在的作用を探索するため、遺伝子の突然変異により同様の抑制作用を有している人を特定し、LDL-C値低下や冠動脈疾患リスクとの関連を調べた。
検討は、ヨーロッパ、アフリカ、南アジア系の冠動脈疾患患者7,364例と、同疾患を有さない対照1万4,728例について
NPC1L1遺伝子のエクソン配列を規定し、突然変異遺伝子(ナンセンス突然変異、スプライス部位突然変異、フレームシフト突然変異)キャリアを特定。さらに、特定の突然変異遺伝子(p.Arg406X)を有する冠動脈疾患患者2万2,590例と対照6万8,412例についてジェノタイプを行い、突然変異遺伝子の発現とLDL-C値および冠動脈疾患リスク両者との関連を調べた。
キャリアはLDL-C値、冠動脈疾患リスクの両者が有意に低下
シーケンシングにより、15の
NPC1L1不活化突然変異遺伝子が特定された。各変異遺伝子についてのヘテロ接合キャリアは、およそ650人に1人の割合で存在していた。
突然変異遺伝子キャリアは、非キャリアと比べて、LDL-C値の平均値が12mg/dL有意に低かった(p=0.04)。
また、キャリアの冠動脈疾患リスクは非キャリアと比べて53%有意に低かった(キャリアのオッズ比:0.47、95%信頼区間[CI]:0.25~0.87、p=0.008)。
突然変異遺伝子キャリアの頻度は、冠動脈疾患患者2万9,954例のうち11例(0.04%)であったが、対照群は8万3,140例のうち71例(0.09%)であった。
これらの結果を踏まえて著者は、「自然発生的な突然変異でNPC1L1機能がLDL-C値低下や冠動脈疾患リスクの低下と関連していることが明らかになった」と述べているが、一方で「NPC1L1機能抑制にターゲットを置いた薬物療法が、冠動脈疾患リスクを減じるかどうかについては未確定のままである」とまとめている。
(武藤まき:医療ライター)