非弁膜症性心房細動(AF)への経皮的左心耳(LAA)閉鎖術は、脳卒中、全身性塞栓症、心血管死の複合エンドポイントについてワルファリン療法に対し非劣性であり、心血管死や全死因死亡を有意に抑制することが、米国・マウントサイナイ医科大学のVivek Y Reddy氏らが行ったPROTECT AF試験で示された。ワルファリンはAF患者の脳卒中予防に有効だが、狭い治療プロファイル、生涯にわたる凝固モニタリングの必要性、他剤や食事との相互作用という制限がある。LAAはAF患者における血栓の好発部位であり、これを機械的に閉鎖するアプローチ(WATCHMANデバイス)の開発が進められている。JAMA誌2014年11月19日号掲載の報告。
機械的閉鎖術による局所療法の有用性を評価
PROTECT AF試験は、非弁膜症性AF患者の心血管イベントの予防における経皮的LAA閉鎖術による局所療法の、ワルファリンによる全身療法に対する非劣性および優越性を検証する非盲検無作為化試験。患者登録期間は2005年2月~2008年6月で、すでに平均フォローアップ期間18ヵ月および2.3年の結果が報告されており、今回は3.8年(2012年10月時点)の長期データの解析が行われた。
対象は、年齢18歳以上の非弁膜症性AFで、CHADS
2スコア≧1、ワルファリンの長期投与を要する患者であった。被験者は、経食道的心エコーガイド下にLAA閉鎖術を施行後に45日間ワルファリン+アスピリンを投与する群またはワルファリン(目標国際標準比:2~3)を恒久的に投与する群(対照群)に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、脳卒中、全身性塞栓症、心血管死/原因不明死の複合エンドポイントとした。非劣性のベイズ事後確率を97.5%以上、優越性のベイズ事後確率を95%以上に設定した。
欧米の59施設に707例が登録され、LAA閉鎖術群に463例、ワルファリン群には244例が割り付けられた。平均年齢はLAA閉鎖術群が71.7歳、ワルファリン群は72.7歳、男性はそれぞれ70.4%、70.1%で、平均CHADS
2スコアは2.2、2.3であった。ベースラインの脳卒中のリスク因子としては、高血圧がそれぞれ89.6%、90.2%、75歳以上が41.0%、47.1%、虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴が17.7%、20.1%に認められた。
複合エンドポイントが40%、心血管死が60%減少
複合エンドポイントの発生率は、LAA閉鎖術群が8.4%(39/463例、2.3/100人年)、ワルファリン群は13.9%(34/244例、3.8/100人年)であった(率比[RR]:0.60、95%確信区間[CI]:0.41~1.05)。非劣性の事後確率は>99.9%、優越性の事後確率は96.0%であり、いずれも事前に規定された判定基準を満たした。
全脳卒中の発生率は、LAA閉鎖術群が5.6%(26/463例、1.5/100人年)、ワルファリン群は8.2%(20/244例、2.2/100人年)であり(RR:0.68、95%CI:0.42~1.37)、非劣性(事後確率>99%)が確認された。このうち出血性脳卒中の発生率は、それぞれ0.6%(3/463例)、4.0%(10/244例)であり(0.15、0.03~0.49)、非劣性(>99%)および優越性(99%)が確認されたのに対し、虚血性脳卒中は5.2%(24/463例)、4.1%(10/244例)であり(1.26、0.72~3.28)、両群に差はみられなかった。
また、LAA閉鎖術群はワルファリン群に比べ、心血管死(3.7%[17/463例] vs. 9.0%[22/244例]、1.0/100人年 vs. 2.4/100人年、ハザード比[HR]:0.40、95%CI:0.21~0.75、p=0.005)および全死因死亡(12.3%[57/466例] vs. 18.0%[44/244例]、3.2/100人年 vs. 4.8/100人年、HR:0.66、95%CI:0.45~0.98、p=0.04)の発生率が有意に低い値を示した。
安全性の複合エンドポイント[頭蓋内出血、輸血を要する出血、LAA閉鎖術群では手技に関連するイベント(介入を要する心膜液浸出など)も含む]の発生率は、LAA閉鎖術群が3.6/100人年、ワルファリン群は3.1/100人年(RR:1.17、95%CI:0.78~1.95)で、事後確率は98.0%であり、非劣性基準を満たした。
LAA閉鎖術群で重篤な心膜液浸出が22例(4.8%)にみられたが、いずれも周術期(デバイス装着後7日間)に発生した。大出血はLAA閉鎖術群が22例(4.8%、7日以降が19例[4.1%])、ワルファリン群は18例(7.4%)に認められた。
著者は、絶対リスク減少率は、複合エンドポイントが1.5%、心血管死が1.4%、全死因死亡は5.7%であるが、死亡に関するエンドポイントには不確実性が残る。LAA閉鎖術群では早期の合併症の頻度が高かったが、長期的な安全性プロファイルは2つの治療群で類似していたとまとめている。
(菅野守:医学ライター)