院外心停止時の心臓マッサージについて、機械的心肺蘇生(CPR)vs.徒手的CPRのアウトカムを比較した結果、両群の30日生存率は同等であったことが、英国・ウォーリック大学のGavin D Perkins氏らによる検討の結果、示された。心マは質の高い胸骨圧迫を維持したCPRが求められることから、機器使用のほうが有効ではないかとして普及が進んでいる。しかし、有効性のエビデンスはほとんど示されておらず、先行研究でもアウトカムを改善しないと報告されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「先行研究の報告とも合わせて、機械的CPR法を普及させても、生存は改善しないことが示された」と述べ、「本研究により、機械的CPRが優位である点は認められないこと、および救急医療についての訓練および実践の難しさを強調するものとなった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年11月16日号掲載の報告より。
LUCAS-2による心肺蘇生と徒手的心肺蘇生の30日生存率を比較
研究グループは、救急医療の最前線への自動心臓マッサージシステム「LUCAS-2」を導入したCPRが、院外心停止の生存を改善するかを評価する、プラグマティックな集団無作為化非盲検試験PARAMEDIC(pre-hospital randomised assessment of a mechanical compression device in cardiac arrest)を行った。
試験には、英国内4つの救急サービスシステム(ウェストミッドランズ、北東イングランド、ウェールズ、サウスセントラル)内にある91ヵ所の都市部および都市近郊部の救急サービスステーションが参加。集団無作為化にて1対2の割合で、LUCAS-2または徒手的CPRを実施する群に割り付けられた。患者は、現場に最初に到着した割り付けサービスステーションの救急隊に従いLUCAS-2による機械的CPRもしくは徒手的CPRを受けた。
主要アウトカムは、intention to treat解析によるCPR後30日時点の生存であった。
救急隊および主要アウトカム集約スタッフは、割り付けについてマスキングされていたが、CPR処置と処置への初期反応を報告するスタッフにはマスキングはできなかった。
LUCAS-2割り付け群の実施率60%、打撲や裂傷といった有害事象も
試験は2010年4月15日~2013年6月10日に、418の救急隊が参加して行われた。試験に登録された適格患者は4,471例(LUCAS-2群1,652例、徒手的CPR群2,819例)。自動心臓マッサージシステムであるLUCAS-2群に割り付けられた患者のうち実際に機械的CPRを受けたのは985例(60%)、一方、徒手的CPR群で機械的CPRを受けたのは11例(1%未満)だった。LUCAS-2群で、機械的CPRが行われなかった理由は、試験関連272例(隊員の間違い168例、隊員が訓練を受けていなかった78例、装置がなかった26例)、使用不可256例(患者が不適当102例、装置に問題14例、装置使用不可140例)、理由不明110例であった。徒手的CPR群で機械的CPRが使用された理由は全例、隊員の間違いによるものだった。
intention to treat解析の結果、30日時点の生存率は、LUCAS-2群6%(104/1,652例)、徒手的CPR群7%(193/2,819例)であり、両群で同等だった(補正後ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間:0.64~1.15)。
重篤有害事象は報告されなかったが、LUCAS-2群で臨床的有害事象が7件報告された(胸部打撲3例、胸部裂傷2例、口腔内出血2例)。また、機器使用中に装置に関する問題が15件発生した。一方、徒手的CPR群では有害または重篤有害事象の報告はなかった。
(武藤まき:医療ライター)