薬剤溶出ステント(DES)留置後に、チエノピリジン系薬とアスピリンによる2剤併用抗血小板療法を1年を超えて行うことは、ステント血栓症発症率や心血管イベント発生率を有意に減少するが、中程度~重度出血率も増大することが明らかにされた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のLaura Mauri氏らが、DESを留置した1万例弱について行った無作為化比較試験「DAPT」の結果、報告した。冠動脈ステント留置後には、血栓性合併症予防のため2剤併用抗血小板療法が推奨されているが、1年を超えて行うことのベネフィットやリスクについて不明であった。NEJM誌2014年12月4日号(オンライン版2014年11月16日号)掲載の報告より。
術後12~30ヵ月のステント血栓症と主な有害心血管・脳血管イベントを比較
試験は、DESを留置した9,961例を対象に行われた。被験者全員に対し、2剤併用抗血小板療法(チエノピリジン系薬+アスピリン)を12ヵ月間行った後、無作為に2群に分け、一方の群にはさらに18ヵ月間にわたり同治療を継続し(チエノピリジン継続群)、もう一方の群にはプラセボ+アスピリン(プラセボ群)を投与した。
主要有効性評価項目は2つで、術後12~30ヵ月のステント血栓症と主な有害心血管・脳血管イベントのそれぞれの発生率だった。安全性に関する主要評価項目は、中程度~重度出血だった。
1年超継続群、ステント血栓症リスクは約7割減だが
結果、ステント血栓症発生率は、プラセボ群1.4%に対し、チエノピリジン継続群で0.4%と、有意に低率だった(ハザード比[HR]:0.29、95%信頼区間[CI]:0.17~0.48、p<0.001)。
また、主な有害心血管・脳血管イベントの発生率も、プラセボ群5.9%に対し、チエノピリジン継続群で4.3%と低率だった(HR:0.71、95%CI:0.59~0.85、p<0.001)。なかでも心筋梗塞発生率が、プラセボ群4.1%に対しチエノピリジン継続群2.1%と、有意に低かった(HR:0.47、95%CI:0.37~0.61、p<0.001)。
一方で中程度~重度出血率は、プラセボ群で1.6%に対し、チエノピリジン継続群で2.5%と、有意に増大した(p=0.001)。
全死因死亡の発生率は、プラセボ群1.5%、チエノピリジン継続群2.0%で、プラセボ群で有意に低かった(HR:1.36、95%CI:1.00~1.85、p=0.05)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)