ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、非梗塞関連動脈(IRA)での閉塞性疾患発症者は約53%に上り、疾患発症が認められた患者の30日死亡率は非発症患者と比べて有意に高いことが明らかにされた。韓国・蔚山大学校医学部のDuk-Woo Park氏らが、約3万例のSTEMI患者が参加した8試験について後ろ向きプール解析を行い、報告した。これまでSTEMI患者におけるIRA疾患の特性についてはほとんどわかっていなかったが、今回の結果について著者は、「前向き試験で確認が必要だが、所見はSTEMI患者における非IRA血行再建術を行うことの妥当性およびタイミングについて疑問を呈するものであった」と指摘している。JAMA誌2014年11月19日号掲載の報告より。
1993~2007年公表の8試験について後ろ向きプール解析
研究グループは、STEMI患者を対象に行われた国際無作為化試験で、1993~2007年に発表された8試験について後ろ向きプール解析を行った。STEMI患者における非IRAの閉塞性疾患の発症と30日死亡との関連を調べた。
被験者は全体で6万8,765例であった。そのうち適切な血管造影に関する情報が得られた2万8,282例について分析を行った。追跡期間は1ヵ月~1年だった。
閉塞性冠動脈疾患の定義は、主要心外膜動脈径の50%以上の狭窄とした。
補正後30日死亡率、非IRA疾患群が3.3%、無発症群が1.9%
結果、非IRAの閉塞性疾患発症率は52.8%(1万4,929例)であった。閉塞血管が1枝の人は29.6%、2枝の人は18.8%だった。
補正前・補正後共に、30日死亡率は非IRAの閉塞性疾患発症群のほうが、非発症群に比べ高かった。補正前30日死亡率は、疾患発症群4.3%に対し非発症群が1.7%(リスク差:2.7ポイント、p<0.001)、補正後はそれぞれ3.3%と1.9%(リスク差:1.4ポイント、p<0.001)だった。
なおこの傾向は、STEMI患者を対象にした別の観察データ、「Korea Acute Myocardial Infarction Registry」(KAMIR、患者総数1万8,217例)とは一貫していたが、「Duke Cardiovascular Databank」(患者総数1,812例)とでは一貫性が認められなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)