入院中小児患者への維持輸液について、等張液(ナトリウム濃度140mmol/L)の使用が低張液(同77mmol/L)使用よりも、低ナトリウム血症の発生リスクを低下し有害事象を増大しないことが明らかにされた。オーストラリア・メルボルン大学のSarah McNab氏らが無作為化対照二重盲検試験の結果、報告した。小児への維持輸液をめぐっては、低張液使用が低ナトリウム血症と関連しており、神経学的疾患の発生や死亡に結び付いていることが指摘されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「小児への維持輸液は、等張液を使用しなければならない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年11月28日号掲載の報告より。
小児への維持輸液を等張液と低張液で割り付けて低ナトリウム血症の発生を評価
試験は、オーストラリア、メルボルンにある王立小児病院で行われた。被験者は、6時間超の維持輸液を必要とする生後3ヵ月~18歳の小児。オンライン無作為化システムを用いて1対1の割合で、等張液(Na140)群と低張液(Na77)群に割り付けて72時間または輸液率が標準維持率の50%未満となるまで投与を行った。
ベースライン時のナトリウム濃度によって小児への維持輸液の割り付けを層別化して行った。研究者、治療担当医、看護師、患者は治療の割り付けについてマスキングされた。
主要アウトカムは、治療期間中の低ナトリウム血症の発生で、血清ナトリウム濃度が135mmol/L未満かつベースラインから3mmol/L以上低下が認められた場合と定義した。評価はintention to treat解析にて行った。
小児への維持輸液について等張液群の発生リスクは0.31倍、有害事象も増大せず
2010年2月2日~2013年1月29日の間に、690例を無作為に割り付けた。主要アウトカムデータは、Na140群319例、Na77群322例について入手できた。
結果、小児への維持輸液について、低ナトリウム血症の発生はNa140群12例(4%)、Na77群35例(11%)で、Na140群のほうが有意に低下した(オッズ比[OR]:0.31、95%信頼区間[CI]:0.16~0.61、p=0.001)。
臨床的な顕性脳浮腫の発生は、両群ともに認められなかった。重篤な有害事象の発生は、Na140群で8例、Na77群は4例であった。治療期間中のてんかん発作は、Na140群は1例であったのに対し、Na77群では7例であった。
(武藤まき:医療ライター)