夏に非常に気温の高い日が2日続くと、高齢者の水分・電解質異常や腎不全などによる入院リスクは増大することが明らかにされた。米国・ハーバード公衆衛生大学院のJennifer F. Bobb氏らが、約2,400万人の米国公的高齢者向け医療保険メディケア受給者について調査を行い報告した。JAMA誌2014年12月24・31日号掲載の報告より。
米国1,943郡を対象に調査
研究グループは1999~2010年にかけて、夏の連日の気温データが95%超記録されている米国1,943郡で、2,370万人の65歳以上、出来高払いメディケア受給者を対象に調査を行った。
調査対象郡の日中気温の99パーセンタイル超の暑さが2日以上続いた期間を、「熱波期間(heat wave periods)」と定義し、そうでない期間と比較して高齢者の入院リスクとの関連を分析した。
熱波期間の熱中症による入院リスクは2.5倍、水分・電解質異常は1.2倍に
その結果、水分・電解質異常や腎不全、尿路感染症、敗血症、熱中症による入院リスクは、熱波期間における発生が、そうでない期間に比べ有意に高かった。具体的には、熱波期間の水分・電解質異常による入院に関する相対リスクは、1.18(95%信頼区間:1.12~1.25)、腎不全は1.14(同:1.06~1.23)、尿路感染症は1.10(同:1.04~1.16)、敗血症は1.06(同:1.00~1.11)、熱中症は2.54(同:2.14~3.01)それぞれ高かった。
入院の絶対リスクの増大差は、水分・電解質異常が10万人中0.34件、腎不全は同0.25件、尿路感染症は0.24件、敗血症は0.21件、熱中症は0.16件だった。
一方で、熱波期間のうっ血性心不全による入院リスクは、そうでない期間に比べ有意に低かった(p<0.05)。
リスクは概して熱波期間中に最も高く、その後5日間も高いままだった。
以上を踏まえて著者は、「高齢者では酷暑は入院リスク増大と関連していた。しかし絶対リスクの増大はわずかで、臨床的重大性については不明のままである」とまとめている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)