BRCA遺伝子の変異型とヌクレオチド配列部位によって、乳がんや卵巣がんリスクが異なることが明らかにされた。米国・ペンシルベニア大学のTimothy R. Rebbeck氏らが、33ヵ国のBRCA1/2変異を持つ女性について行った観察研究の結果、報告した。これまで同遺伝子キャリアに関するがんリスクについては、限定的であり、研究グループは大規模な検討を行い、特有のがんリスクの特定を試みた。今回の結果を踏まえて著者は、「確証が得られれば、BRCA1/2変異のキャリアに対してリスク評価とがん予防への意思決定に寄与する知見となるだろう」とまとめている。JAMA誌2015年4月7日号掲載の報告より。
BRCA1変異の約2万人とBRCA2変異の約1万2,000人を追跡
33ヵ国55ヵ所の医療機関を通じて1937~2011年(中央値1999年)間の、
BRCA1変異(1万9,581例)または
BRCA2変異(1万1,900例)を持つ女性を特定し、観察研究を行った。
BRCA1/2の変異型、機能、ヌクレオチド配列部位と、乳がん・卵巣がんリスクを分析した。
また、乳がんと卵巣がんの相対ハザード比(RHR)も算定した。RHRが1より大きい場合には、乳がんリスクの増大が、1より小さい場合には、卵巣がんリスクの増大が示唆されるとした。
BRCA1/2ともに乳がんで3つの多発領域を特定
その結果、
BRCA1変異キャリアの女性のうち、乳がんの診断を受けたのは9,052例(46%)、卵巣がんは2,317例(12%)、乳がんと卵巣がんは1,041人(5%)、がんとの診断を受けなかったのは7,171例(37%)だった。
BRCA2変異キャリアでは、それぞれ6,180例(52%)、682例(6%)、272例(2%)、4,766例(40%)だった。
BRCA1変異については、乳がんについて3ヵ所の多発領域が見つかり、RHRは1.34~1.46だった。卵巣がんの多発領域についても1ヵ所が見つかり、RHRは0.62だった。
BRCA2変異についても、乳がんについて3ヵ所の多発領域が見つかり、RHRは1.63~2.31だった。また、卵巣がんでも複数の多発領域が見つかり、RHRは0.51~0.57だった。
なお、乳がんの診断については両遺伝子キャリアとも、年齢が若いことと関連していた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)