巨大児出産が疑われる場合には、自然分娩よりも分娩誘発を行うほうが肩甲難産や関連疾患のリスクを低下することが、スイス・ジュネーブ大学のMichel Boulvain氏による無作為化試験の結果、示された。分娩誘発は、帝王切開となるリスクを増大することなく自然経腟分娩の尤度を改善することも示されたという。結果を踏まえて著者は、「早期分娩誘発の影響とバランスをみながら検討すべきである」とまとめている。巨大児については、肩甲難産のリスクが高いことが知られている。Lancet誌オンライン版2015年4月8日号掲載の報告より。
フランス、スイス、ベルギーの19施設で無作為化試験
研究グループは、妊娠期間に比して大きい過体重児(large-for-date fetuses)の出産について、肩甲難産およびその他の新生児および母体疾患の予防に関して、分娩誘発と自然分娩を比較した。
検討は2002年10月1日~2009年1月1日に、フランス、スイス、ベルギーの19ヵ所の3次医療機能センターで行われた。
対象は、単体児を妊娠しており、在胎児の体重が95パーセンタイル値(36週時3,500g、37週時3,700g、38週時3,900g)超と推定される妊婦を適格とし、妊娠期間37~38週目に3日以内に、分娩誘発を行う群または自然分娩とする群に、無作為に割り付けた。無作為化は施設単位で行われ、被験者と看護者には割り付け情報はマスクされなかった。
主要アウトカムは、臨床的に顕著であった肩甲難産、鎖骨骨折、腕神経叢損傷、頭蓋内出血、死亡の複合とした。
分娩誘発群、肩甲難産発生が有意に低下、自然経腟分娩の可能性上昇
分娩誘発群に409例、自然分娩群に413例が割り付けられ、それぞれ、最終解析には407例、411例が組み込まれた。出生児の平均体重は、分娩誘発群3,831(SD 324)g、自然分娩群4,118(SD 392)gであった。
分析の結果、肩甲難産または関連疾患の発生は、分娩誘発群8例、自然分娩群25例で、前者の有意なリスク低下が認められた(相対リスク[RR]:0.32、95%信頼区間[CI]:0.15~0.71、p=0.004)。
腕神経叢損傷、頭蓋内出血、死亡については両群で発生がみられなかった。
自然経腟分娩の尤度は、分娩誘発群のほうが自然分娩群よりも高かった(59% vs. 52%、RR:1.14、95%CI:1.01~1.29)。なお、帝王切開(28% vs. 32%)や新生児罹患について、両群間で有意な差はみられなかった。
(武藤まき:医療ライター)