心臓手術後の呼吸不全患者または同リスクのある患者に対して、ネーザルハイフロー(high-flow nasal oxygen)療法はバイレベル気道陽圧(BiPAP)療法と比較して、遜色のない治療法であることが明らかにされた。フランス、マリ・ラヌロング記念外科センター(CCML)のFrancois Stephan氏らが無作為化試験の結果、報告したもので、「所見は、類似の患者であれば、ネーザルハイフロー療法の使用を支持するものであった」とまとめている。心臓手術後に低酸素血症を来した患者について、再挿管を回避しアウトカム改善する非侵襲的な換気法として、しばしばBiPAP療法が用いられる。一方でネーザルハイフロー療法は、施行の簡便さ、耐用性および臨床的効果の観点から酸素投与が必要な患者への使用が増大しており、研究グループは、ネーザルハイフロー療法がBiPAP療法に劣らないと仮定し無作為化試験で検証した。JAMA誌オンライン版2015年5月17日号掲載の報告より。
vs. BiPAP療法について多施設無作為化非劣性試験
試験は、フランスのICU施設6ヵ所で2011年6月15日~2014年1月15日に行われた多施設無作為化非劣性試験(BiPOP試験)であった。
被験者は総計830例で、心臓手術(冠状動脈バイパス、弁修復、肺血栓内膜摘除が大半)を受け、急性呼吸不全を呈した患者(自発呼吸試験不成功、もしくは試験には成功したが抜管不成功)、または既存のリスクため抜管後に呼吸不全を起こすことが考えられる患者であった。
患者を、ネーザルハイフロー療法を受ける群(酸素流量50L/分、吸入気酸素濃度[Fio2] 50%、414例)とBiPAP療法を受ける群(フルマスクで4時間以上/日、圧支持レベル8cm H2O、終末呼気陽圧4cm H2O、Fio2 50%、416例)に、無作為に割り付けて評価した。
主要アウトカムは治療不成功で、再挿管、その他の試験治療に切り替え、または早期に治療中断(患者からの要請または胃部膨満感など有害事象による)と定義し、ネーザルハイフロー療法の非劣性は、95%信頼区間[CI]下限値が9%未満である場合とした。
副次アウトカムは、ICU入室期間中の死亡、呼吸数の変化、呼吸器合併症などであった。
治療不成功の非劣性確認、ICU死亡も有意差なし
結果、ネーザルハイフロー療法のBiPAP療法に対する非劣性が確認された。治療不成功は、ネーザルハイフロー療法群87/414例(21.0%)、BiPAP療法群91/416例(21.9%)で、絶対差は0.9%(95%CI:-4.9~6.6%、p=0.003)であった。
また、ICU死亡(ネーザルハイフロー療法群28例[6.8%]、BiPAP療法群23例[5.5%])について、有意差はみられなかった(絶対差:1.2%、95%CI:-2.3~4.8%、p=0.66)。
なお24時間後の皮膚障害の発生頻度が、BiPAP群で有意に高率であった(3%[95%CI:1.8~5.6%] vs. 10%[同:7.3~13.4%]、p<0.001)。