血管イベント歴のない高齢者(平均年齢74歳)について、脂質降下薬(スタチンまたはフィブラート系薬)の使用有無別に平均9年間フォローアップした検討において、非使用群と比べて使用群の脳卒中リスクが約30%低下したことが報告された。フランス・ボルドー大学のAnnick Alperovitch氏らが、7,484例の大規模集団を対象に行った住民ベースのコホート試験の結果、示された。また、リスク低下についてスタチンとフィブラート系薬の服用者別にみた場合、同等であったという。著者は「今回の試験データは、高齢者の1次予防として脂質降下薬を長期に用いることは脳卒中の予防に結び付くという仮説を提起するものであった」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年5月19日号掲載の報告より。
7,484例対象、使用群vs. 非使用群を平均9.1年追跡
研究グループは、血管イベント歴のない高齢者における脂質降下薬(スタチンまたはフィブラート系薬)の使用と、冠動脈性心疾患および脳卒中の長期リスクの関連を調べる前向き住民ベースコホート試験をデザインした。試験は1999~2000年に被験者の募集が行われ現在も継続中で、5回の対面調査が完了している。
被験者は、フランスの3都市(ボルドー、ディジョン、モンペリエ)居住の65歳以上の高齢住民から無作為にサンプリングされ、登録時に血管イベント歴のなかった7,484例(女性63%、平均年齢73.9歳)で、平均追跡期間は9.1年であった。
主要評価項目は、ベースラインでの脂質降下薬使用者vs. 非使用者の冠動脈性心疾患および脳卒中の補正後ハザード比で、複数の潜在的交絡因子を補正後の多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。ハザード比は、すべての脂質降下薬使用について、またスタチン、フィブラート系薬別に推算して検討した。
使用群の脳卒中ハザード比0.66、冠動脈性心疾患との関連はみられず
脂質降下薬の使用者は、非使用者と比較して、脳卒中リスクの低下が認められた(ハザード比:0.66、95%信頼区間[CI]:0.49~0.90)。脳卒中ハザード比は、スタチン使用群(0.68、0.45~1.01)とフィブラート系薬使用群(0.66、0.44~0.98)で同等であった。
一方、脂質降下薬使用と冠動脈性心疾患の関連はみられなかった(ハザード比: 1.12、0.90~1.40)。
年齢、性、BMI、高血圧症、収縮期血圧、トリグリセリド値での層別化分析、および傾向スコア分析において、脳卒中または冠動脈性心疾患のいずれについても、これらの変数によるリスクへの影響はみられなかった。