急性冠症候群(ACS)の治療において、スタチンにエゼチミブを併用すると、LDLコレステロール(LDL-C)値のさらなる低下とともに心血管アウトカムが改善することが、米国・ハーバード大学医学大学院のChristopher P Cannon氏らが実施したIMPROVE-IT試験で示された。スタチンは、心血管疾患の有無にかかわらず、LDL-C値と心血管イベントのリスクの双方を低減するが、残存する再発リスクと高用量の安全性に鑑み、他の脂質降下薬との併用が検討されている。エゼチミブは、スタチンとの併用で、スタチン単独に比べLDL-C値をさらに23~24%低下させることが報告されていた。NEJM誌オンライン版2015年6月3日号掲載の報告。
上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価
IMPROVE-IT試験は、ACSに対するシンバスタチン+エゼチミブ併用療法の有用性を評価する二重盲検無作為化試験(Merck社の助成による)。対象は、年齢50歳以上、入院後10日以内のACS(ST上昇および非上昇心筋梗塞、高リスク不安定狭心症)で、脂質降下療法を受けている場合はLDL-C値が50~100mg/dL、受けていない場合は50~125mg/dLの患者であった。
被験者は、シンバスタチン(40mg/日)+エゼチミブ(10mg/日)またはシンバスタチン(40mg/日)+プラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞、再入院を要する不安定狭心症、冠動脈血行再建術(割り付け後30日以降)、非致死的脳卒中の複合エンドポイントとした。フォローアップ期間中央値は6年だった。
2005年10月26日~2010年7月8日までに、39ヵ国1,147施設に1万8,144例が登録され、併用群に9,077例、単剤群には9,067例が割り付けられた。全体の平均年齢は64歳、女性が24%で、糖尿病が27%にみられ、入院中に冠動脈造影が88%、PCIが70%に施行された。入院時の平均LDL-C値は、両群とも93.8mg/dLだった。
LDL-C値が24%低下、心血管イベントのリスクが2.0%減少
治療1年時の平均LDL-C値は、併用群が53.2mg/dLであり、単剤群の69.9mg/dLに比べ有意に低下していた(p<0.001)。16.7mg/dLという両群の差は、エゼチミブの追加により、スタチン単剤に比べLDL-C値がさらに24%低下したことを示す。
治療1年時の総コレステロール、トリグリセライド、非HDLコレステロール、アポリポ蛋白B、高感度CRPの値はいずれも、単剤群に比べ併用群で有意に低かった。
治療7年時の主要評価項目のイベント発生率(Kaplan–Meier法)は、併用群が32.7%と、単剤群の34.7%に比べ有意に改善した(絶対リスク差:2.0%、ハザード比[HR]:0.936、95%信頼区間[CI]:0.89~0.99、p=0.016)。併用によるベネフィットは治療1年時には認められた。
3つの副次評価項目も併用群で有意に優れた(全死因死亡/重症冠動脈イベント/非致死的脳卒中:p=0.03、冠動脈心疾患死/非致死的心筋梗塞/30日以降の緊急冠動脈血行再建術:p=0.02、心血管死/非致死的心筋梗塞/不安定狭心症による入院/30日以降の全血行再建術/非致死的脳卒中:p=0.04)。
全死因死亡(p=0.78)、心血管死(p=1.00)には差がなかったが、心筋梗塞(p=0.002)、虚血性脳卒中(p=0.008)の発症率は併用群で有意に低かった。併用のベネフィットは、ほぼすべてのサブグループに一致して認められ、糖尿病および75歳以上の高齢患者でとくに顕著だった。
両群間(併用群 vs.単剤群)で、筋疾患(0.2 vs.0.1%)、胆嚢関連有害事象(3.1 vs.3.5%)、胆嚢摘出術(1.5 vs.1.5%)、ALT/AST正常上限値の3倍以上(2.5 vs.2.3%)、がんの新規発症/再発/増悪(10.2 vs.10.2%)、がん死(3.8 vs.3.6%)の頻度に差はなかった。有害事象による治療中止は、併用群が10.6%、単剤群は10.1%に認められた。
著者は、「LDL-C値を以前の目標値よりも低下させることで、さらなるベネフィットがもたらされると考えられる」としている。
(菅野守:医学ライター)
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