急性虫垂炎は抗菌薬で治療が可能か?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2015/06/30

 

 単純性急性虫垂炎への抗菌薬治療は、虫垂切除術に対して非劣性ではないことが、フィンランド・トゥルク大学病院のPaulina Salminen氏らが実施したAPPAC試験で示された。本症の治療では、1世紀以上にわたり手術が標準とされてきた。一方、近年、3つの無作為化試験や5つのメタ解析など、抗菌薬治療を支持するエビデンスが増えていたが、個々の試験には限界があるため、依然として標準治療は虫垂切除術とされている。JAMA誌2015年6月16日号掲載の報告より。

530例で非劣性を検証
 APPAC試験は、急性虫垂炎は抗菌薬で治療が可能であるとの仮説を検証する非盲検無作為化非劣性試験。対象は、年齢18~60歳、単純性急性虫垂炎の疑いで救急診療部に入院し、CT検査で診断が確定された患者であった。

 被験者は、ertapenem(1g/日)を3日間静脈内投与後、レボフロキサシン(500mg、1日1回)+メトロニダゾール(500mg、1日3回)を7日間経口投与する群(抗菌薬群)または標準的な開腹虫垂切除術を施行する群(手術群)に無作為に割り付けられ、1年間のフォローアップが行われた。

 主要エンドポイントは、抗菌薬群が手術を要さない退院および1年時の非再発であり、手術群は虫垂切除術の成功であった。副次エンドポイントには、介入後の合併症、入院期間、介入後の疼痛スコア(視覚アナログスケール[VAS]:0~10、点が高いほど疼痛が強い)などが含まれた。

 2009年11月~2012年6月の間に、フィンランドの6施設に530例が登録され、抗菌薬群に257例(年齢中央値:33.0歳、男性:60.3%)、手術群には273例(35.0歳、63.7%)が割り付けられた。抗菌薬群のうち1年以内に外傷で死亡した1例を除く256例がフォローアップを完了した。

抗菌薬治療成功率72.7%、遅延的手術例に重度合併症を認めず
 抗菌薬群のうち、70例(27.3%、95%信頼区間[CI]:22.0~33.2%)に対し初回虫垂炎発症から1年以内に手術が行われ、手術を要さなかったのは186例(72.7%、95%CI:66.8~78.0)であった。一方、手術群では、1例を除き虫垂切除術が成功し、成功率は99.6%(95%CI:98.0~100.0)であった。

 intention-to-treat(ITT)解析では、両群間の治療効果の差は−27.0%(95%CI:-31.6~∞、p=0.89)であった。これは、事前に規定された非劣性マージンである24%を満たさないことから、虫垂切除術に対する抗菌薬治療の非劣性は示されなかった。

 抗菌薬群で手術を受けた70例のうち、58例(82.9%)は単純性虫垂炎で、7例(10.0%)は複雑性急性虫垂炎であり、5例(7.1%)は虫垂炎は正常だが再発疑いで虫垂切除術が施行されていた。これら抗菌薬群の遅延的手術例には、腹腔内膿瘍や他の重度の合併症はみられなかった。

 合併症発症率は抗菌薬群が2.8%であり、手術群の20.5%に比べ有意に低かった(p<0.001)。初回入院期間中央値は抗菌薬群が3.0日(四分位範囲:3~3)と、手術群の3.0日(2~3)よりも有意に長かった(p<0.001)。疼痛スコアは退院時がそれぞれ2.0点、3.0点(p<0.001)、1週間後が1.0点、2.0点(p<0.001)であり、いずれも抗菌薬群で疼痛が有意に軽度であった。

 著者は、「抗菌薬治療の非劣性は確認できなかったが、72.7%という抗菌薬治療の成功率は、既報の3つの無作為化試験や最近の地域住民ベースの前向き研究と比較して良好であり、最終的に手術を受けた患者も重度の合併症を認めなかった」とまとめ、「患者に抗菌薬と手術に関する情報を提供し、意思決定できるようにすべきである。今後は、手術を要する複雑性急性虫垂炎患者を早期に同定する試験、および抗菌薬治療が至適と考えられる単純性急性虫垂炎患者を前向きに評価する研究を進めるべきである」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)