脳卒中は認知機能を急速に低下させることが米国・ミシガン大学のDeborah A. Levine氏らによる前向き研究の結果、明らかにされた。認知機能の低下は脳卒中サバイバーの主要な障害要因であるが、これまで脳卒中後の認知機能の変化がどれほどなのかは不明であった。検討では6年間の追跡において、脳卒中は認知機能を加速度的かつ持続的に低下していくことも明らかになったという。JAMA誌2015年7月7日号掲載の報告より。
脳卒中サバイバーの認知機能の変化を評価
検討は、前向きコホート研究Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke(REGARDS)の参加者のうち、ベースラインで認知障害がみられなかった45歳以上2万3,572例を対象とした。被験者は米国大陸に居住しており、2003~2007年に登録され2013年3月31日まで追跡を受けた。追跡期間中央値は6.1年(四分位範囲:5.0~7.1年)で、その間に515例が脳卒中サバイバーとなり、残る2万3,057例は脳卒中が未発症であった。
研究グループは、脳卒中サバイバーの認知機能の変化を評価し、発症前の機能の変化と比較した。
主要アウトカムは、総合的な認知機能の変化(6項目スクリーナー[Six-Item Screener: SIS]のスコア範囲0~6で評価)とした。副次アウトカムは、新たな学習能における変化(Consortium to Establish a Registry for Alzheimer Disease Word-List Learningのスコア範囲0~30で評価)、言語記憶(Word-List Delayed Recallのスコア範囲0~10で評価)、実行機能(Animal Fluency Testのスコア範囲0以上で評価)、認知機能障害(SISスコア5未満[障害あり] vs.5以上[障害なし]で評価)などであった。すべての評価は、高スコアほど認知機能が良好であることを示した。
脳卒中は総合的な認知機能、新たな学習能、言語記憶の急速な低下と関連
結果、脳卒中は、総合的な認知機能(0.10ポイント、95%信頼区間[CI]:0.04~0.17)、新たな学習能(1.80ポイント、同:0.73~2.86)、言語記憶(0.60ポイント、0.13~1.07)の急速な低下と関連していた。
脳卒中被験者は非脳卒中被験者と比較して、総合的な認知機能[0.06ポイント(95%CI:0.03~0.08)/年の差が拡大]、実行機能[同0.63ポイント(同:0.12~1.15)]の低下がより急速であった。一方で、新たな学習能、言語記憶ではそうした加速はみられず、発症前と比較しても軌跡の有意な変化はみられなかった。
サバイバーにおける脳卒中後の認知障害リスクは、脳卒中直前と比較して急激に上昇したが、統計的な有意差はみられなかった(オッズ比1.32、95%CI:0.95~1.83、p=0.10)。しかしながら認知障害の発生が、脳卒中前と比べて脳卒中後のほうが有意に早まっていた(オッズ比/年:1.23、95%CI:1.10~1.38、p<0.001)。
ベースラインのあらゆる共変量について平均値を有した70歳代の黒人女性において、追跡3年時点における脳卒中が、より重度の認知障害と関連していることも明らかになった。認知障害発生率の絶対差でみると、3年時点4.0%(95%CI:-1.2~9.2%)、6年時点は12.4%(同:7.7~17.1%)であった。
(武藤まき:医療ライター)