腹部大動脈瘤への血管内治療は、開腹術に比べ、周術期死亡率は低いものの、長期生存率は同等であることが長期追跡試験で判明した。また血管内治療後の動脈瘤破裂率は、開腹術より高かった。さらに血管内治療後2年間の再介入率は、ここ8年で減少傾向にあるなど、同治療アウトカムの改善が認められたという。米国・ベスイスラエルディーコネス医療センターのMarc L. Schermerhorn氏らが、腹部大動脈瘤で血管内修復治療または開腹術を受けたメディケア受給者、約4万例のマッチング・ペアについて調べ明らかにした。NEJM誌2015年7月23日号掲載の報告より。
血管内治療と開腹術を傾向スコアマッチングで比較
研究グループは、メディケア受給者の中から、2001~2008年に腹部大動脈瘤の修復手術を受け2009年まで追跡可能だった被験者について評価を行った。血管内治療を受けた群と開腹術の群について、周術期・長期生存、再手術、合併症のそれぞれの発生率について、傾向スコアをマッチングして比較した。
被験者となった血管内治療・開腹術を受けた患者は、3万9,966組だった。
周術期死亡率、血管内治療・開腹術ともに8年間で減少
結果、周術期死亡率は、開腹術群が5.2%に対し、血管内治療群は1.6%と有意に低率だった(p<0.001)。
生存率については、追跡当初3年間は、血管内治療群が開腹術群に比べ有意に高率だったものの、その後の生存率は同等だった。
2001~2008年にかけて、周術期死亡率は、血管内治療群で0.8ポイント、開腹術群では0.6ポイント、それぞれ有意に低下した(それぞれp=0.001、p=0.01)。さらに血管内治療から開腹術への移行率については、2001年の2.2%から2008年の0.3%へと有意に低下した(p<0.001)。
追跡期間8年間において、動脈瘤やその合併症の管理に関する介入の発生率は、血管内治療群のほうが高かった。開腹術群では、開腹術関連の合併症に対する介入が多くみられた。追跡期間の動脈瘤破裂率は血管内治療群が5.4%に対し、開腹術群では1.4%だった(p<0.001)。
なお、血管内治療後2年間の再介入発生率は、2001年の10.4%から、2007年には9.1%へと、減少傾向が認められた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)