悪性徴候がなく胃内視鏡検査により生検を受けた人において、20年以内に胃がんを発症するのは、正常粘膜の人では約256人に1人、胃炎は85人に1人、萎縮性胃炎50人に1人、腸上皮化生39人に1人、異形成19人に1人であることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のHuan Song氏らによる検討の結果、示された。同国低リスク集団40万人超を対象とした観察コホート研究の結果、明らかにしたもの。著者は、「さらに費用対効果の検討を行い、長期的な胃の前がん病変の内視鏡サーベイランスの施策に、これらの数字を生かしていく必要がある」とまとめている。BMJ誌オンライン版2015年7月27日号掲載の報告より。
悪性徴候がなく胃生検を受けた40万5,211人を追跡
検討は、スウェーデンの全国疾患レジスターデータから、1979~2011年に悪性徴候がなく胃生検を受けた40万5,211人を対象とした。
主要評価項目は胃がんの発生で、ベースラインの生検結果に基づく粘膜変化別患者群(Correa’s cascade群とその他診断群)で評価した。Correa’s cascade群は、正常粘膜、軽度の粘膜変化あり、胃炎、萎縮性胃炎、腸上皮化生、異形成の各群に分類された。
スウェーデン一般集団を参照値とした標準化発生率で相対リスクを推算し評価した。Correa’s cascade群内の各粘膜変化患者群の検討では、Cox回帰モデルを用いて正常胃粘膜患者群との比較によるハザード比を算出して評価した。
胃粘膜病変の進行度に伴い胃がんリスク増大が明らかに
フォローアップの当初2年を除外後、Correa’s cascade群には28万8,167例(平均年齢56歳、男女比:1対1.24)、その他診断群には5万4,130例が分類された。Correa’s cascade群の追跡期間は約10年(腸上皮化生の7.9年以外は同等)であった。
追跡期間中、胃がんと診断された人は全コホートでは1,599例であった。そのうちCorrea’s cascade群は1,273例であった。
Correa’s cascade群の胃がんの粗年間発生率は、正常粘膜群20×10
-5(標準化発生率1.0)、軽度の粘膜変化あり42×10
-5(同1.5)、胃炎59×10
-5(同1.8)、萎縮性胃炎100×10
-5(同2.8)、腸上皮化生129×10
-5(同3.4)、異形成263×10
-5(同6.5)であった。
Cox回帰モデルによる検討の結果、胃粘膜病変の進行に伴いリスクが増大することが示され、最も高い異形成群のリスクは正常粘膜群の10.9倍であった(ハザード比:10.9、95%信頼区間[CI]:7.7~15.4)。
発生率の増大はフォローアップ期間を通して一定してみられ、各群間の累積発生率の差は広がり続けた。