フランス・パリ第5大学のOlivier Aubert氏らは、拡大基準ドナー(extended criteria donor:ECD)腎移植の長期アウトカムを評価し、予後を規定する主要因を明らかにする前向き住民ベースコホート試験を行った。その結果、移植7年後の移植片の生着率はECD移植レシピエントのほうが有意に低かったが、移植レシピエントにおけるドナー特異的抗HLA抗体(DSA)の非存在と冷虚血時間の短縮で、アウトカムは改善可能であることが明らかになったことを報告した。ECDは、ドナーを60歳以上もしくは50~59歳で血管系併存疾患がある人まで適応を拡大した基準である。著者は今回の結果を踏まえて、「DSAと冷虚血時間の2つの因子を修正後にECD移植は満足な長期予後を得ることができ、標準基準ドナー(SCD)腎移植と類似した移植片の生着率を達成可能である」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年7月31日号掲載の報告より。
拡大(ECD) vs.標準基準ドナー(SCD)からの腎移植の長期生着について評価
試験は、フランスの4施設で2004年1月~2011年1月に腎移植を受けた連続患者を(主要コホート)、2014年5月まで追跡して行われた。また、検証コホートに2002年1月~2011年12月に別の4施設から腎移植患者を包含し評価した。
主要評価項目は、長期の腎移植片生着で、ドナー、レシピエント、移植関連の臨床的特徴(移植前生検、ベースラインのDSA値)で系統的に評価した。
試験には6,891例が包含された(主要コホート2,763例、検証コホート4,128例)。
主要コホートは、年齢中央値52歳、85.8%は死体腎で移植が行われた。ECD腎移植は、916例(33.2%)であった。
移植時のDSAの非存在、冷虚血時間の短縮で長期生着率改善は可能
全体として、ECD腎移植のほうがSCD腎移植と比べて、7年後の移植片生着率が有意に低かった(80% vs. 88%、p<0.001)。
またECD腎移植患者における7年後の移植片生着率は、移植時にDSAの存在が認められた患者(12.1%)が、認められなかった患者と比べて有意に低かった(44% vs.85%、p<0.001)。
ドナー、レシピエント、移植の特徴、および移植前生検の所見、ベースラインでの免疫学的パラメータで調整後、長期の移植片生着失敗の主要因は、ECD腎移植へ割り付けたこと(ハザード比[HR]:1.84、95%信頼区間[CI]:1.5~2.3、p<0.001)、移植日のDSAの存在確認(同:3.00、2.3~3.9、p<0.001)、そして冷虚血時間が長いこと(12時間超で1.53、1.1~2.1、p=0.011)であった。
DSAの存在が認められたECD腎レシピエントは、その他の移植群と比べて、移植片生着失敗リスクが5~6倍高かった(p<0.001)。
(武藤まき:医療ライター)