パートナーによる家庭内暴力(Intimate partner violence:IPV)や過度の飲酒経験のある女性に対して、緊急外来部門(ED)での短期動機付け介入は、評価対照群との比較でそれらの発生日数を有意に減らさなかったことが、米国・ペンシルベニア大学のKarin V. Rhodes氏らによる無作為化試験の結果、明らかにされた。著者は、「結果は、こうした設定での短期動機付け介入を、支持しないものであった」と結論している。これまで、ED訪問時に提供したIPVや過度の飲酒に対する短期動機付け介入の効果について統合した検証は行われていなかった。JAMA誌2015年8月4日号掲載の報告より。
600例を対象に無作為化試験
試験は、2011年1月~2014年12月に、2ヵ所の米国の都市部にある大学病院のEDで行われた。被験者はIPVを受けており、飲酒量が女性の安全限界値(National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism規定量)を上回っている18~64歳の女性600例であった。
全員に社会福祉サービスを紹介して、2対2対1の割合で、短期介入群(242例)、評価対照群(237例)、非接触対照群(121例)に無作為に割り付けた。
短期介入群には、EDで修士レベルのセラピストによる20~30分のマニュアルに基づく動機付け介入(患者の変化の様子を記録・モニタリング)すると、電話によるフォローアップ(10日後)が行われた。評価対照群には短期介入群と同数の評価を行い、非接触対照群には3ヵ月時点で1回だけ評価を行った。
主要評価項目は、事前に規定した過度の飲酒とIPVの発生で、12週間にわたって双方向の音声応答システムを使って評価した。
介入群の12週時点のオッズ比、IPVは1.02、過度の飲酒は0.99
600例のうち、80%が黒人女性で平均年齢は32歳であった。
2回以上音声システムコールをした人は89%であった。3ヵ月時点でインタビュー評価を完遂した人は78%、6ヵ月時点は79%、12ヵ月時点は71%であった。
12週間の追跡期間中、介入群と対照群の週ごとの評価において、IPV(オッズ比[OR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.98~1.06)、過度の飲酒(同:0.99、0.96~1.03)の発生はいずれも有意な差はみられなかった。
ベースラインから12週時点までに、あらゆるIPVを経験した女性の数は、介入群は57%(134/237例)から43%(83/194例)に減少し、評価対照群は63%(145/231例)から41%(77/187例)の減少であった(絶対差:8%)。同様に過度の飲酒については、介入群は51%(120/236例)から43%(83/194例)に減少し、評価対照群は46%(107/231例)から41%(77/187例)の減少であった(絶対差:3%)。
12ヵ月時点での評価では、介入群の43%(71/165例)と評価対照群の47%(78/165例)が、過去3ヵ月間にIPVを受けなかったと報告した。また、飲酒量を減らしたと回答した人はそれぞれ19%(29/152例)、24%(37/153例)であった。
(武藤まき:医療ライター)