クローン病の薬物治療について、早期の抗TNF受容体拮抗薬および代謝拮抗薬による複合免疫療法(ECI)は、従来療法(症状や重症度に合わせて経時的に投与)と比べて、寛解維持などの症状コントロールについて有意な効果は示されなかった。しかし、重大有害アウトカムのリスクを有意に低下することが示された。カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のReena Khanna氏らが、非盲検クラスター無作為化試験REACTの結果、報告した。著者は、「後者の所見はさらなる試験の検証仮説となりうるものである」と述べ、「ECIは、重篤な薬物関連有害事象や死亡のリスク増大とは関連していなかった」と強調し本報告をまとめている。Lancet誌オンライン版2015年9月2日号掲載の報告より。
クラスター無作為化試験で、12ヵ月時点のステロイド未治療寛解率を評価
クローン病の薬物治療は、症状や炎症の程度によって、ステロイド薬、代謝拮抗薬、抗TNF-α受容体拮抗薬と段階的に使用していくのが特色である。一方で先行研究において、すでにECIの未治療患者に対する優越性などが報告されているが、感染症や、多剤レジメンの複雑さ、コストや地域医療への普及などへの懸念から、なお従来療法が標準療法とされている。これらの現状を踏まえて研究グループは今回、地域医療をベースにECIの有効性、安全性を検討するREACT試験(Randomised Evaluation of an Algorithm for Crohn's Treatment)を行った。
試験への全面的な協力に同意しクローン病患者60例のデータを提供することに応じた、ベルギーとカナダにある消化器診療所を選択し、無作為にECI群と従来療法群に割り付けた。割り付けはコンピュータで、地域性と診療所サイズを最小化して行われた。
各診療所では、18歳以上、クローン病、英語、フランス語もしくはドイツを話し、電話連絡が可能であり、インフォームド・コンセントの書面提供が可能であった最大60例の連続成人患者について2年間フォローアップを行った。
主要アウトカムは、12ヵ月時点で、診療所レベルで評価したステロイド未治療で寛解を維持(Harvey-Bradshaw Index[HBI]スコア4以下)していた患者の割合とした。
寛解率に有意差はないが、重大有害アウトカムが有意に減少
試験は、2010年3月15日~2013年10月1日に行われた。60診療所がスクリーニングを受け、41診療所がECI群(22ヵ所)と従来治療群(19ヵ所)に無作為に割り付けられたが、2診療所(各群1ヵ所)が連続患者の情報提供ができない、診療所が閉鎖などを理由に中途で脱落。intention-to-treat解析は39診療所、1,982例を包含して行われた。
12ヵ月間のフォローアップ完了者は、ECI群921/1,084例(85%)、従来療法群806/898例(90%)であった。
12ヵ月時点の診療所レベル分析での寛解率は、ECI群66.0%(SD 14.0%) vs.従来療法群61.9%(同16.9%)で、同等であった(補正後差:2.5%、95%信頼区間[CI]:-5.2%~10.2%、p=0.5169)。
24ヵ月時点の患者レベル分析における重大有害アウトカム(外科的手術、入院、重篤な疾患関連合併症の複合)の発生率は、ECI群が有意に低かった(27.7% vs. 35.1%、絶対差[AD]:7.3%、ハザード比[HR]:0.73、95%CI:0.62~0.86、p=0.0003)。重篤な薬物関連有害事象の発生に差はみられなかった(1%[10/1,084例] vs.1%[10/898例])。