中等症~重症の早期クローン病患者において、臨床症状とバイオマーカーの組み合わせに基づく抗腫瘍壊死因子療法の適時escalation戦略は、症状のみで治療方針を決定するよりも、臨床的および内視鏡的アウトカムを改善することが示された。米国・マウントサイナイ医科大学のJean-Frederic Colombel氏らが、22ヵ国74施設で実施した無作為化第III相試験「CALM試験」の結果を報告した。便中カルプロテクチン(FC)やC反応性蛋白(CRP)など腸炎症のバイオマーカーは、クローン病患者のモニタリングに推奨されてきたが、これらを用いた治療方針の決定がクローン病患者の予後を改善するかどうかは不明であった。Lancet誌オンライン版2017年10月31日号掲載の報告。
臨床症状+バイオマーカーに基づくクローン病の治療決定の有効性を評価
CALM試験の対象は、内視鏡的活動期(クローン病内視鏡的活動指数[CDEIS]>6、1つ以上の区域でのCDEISサブスコア合計>6、ベースラインのprednisone投与量に応じたクローン病活動指数[CDAI]150~450、免疫調整薬や生物学的製剤の治療歴がない)にある18~75歳の中等症~重症クローン病患者で、タイトコントロール群または標準コントロール群に1対1の割合で無作為に割り付けられた(喫煙状況、体重および罹患期間で層別化)。割り付け時期は、prednisone導入療法8週後、または疾患活動期の場合は早期に導入とした。
両群とも治療は、未治療→アダリムマブ導入→アダリムマブ隔週→アダリムマブ毎週→アダリムマブ毎週+アザチオプリン2.5mg/kg/日の連日投与へ、段階的に増量さらに免疫調整剤との併用療法を行った。このescalation戦略は、治療失敗基準(treatment failure criteria)に基づき両群で異なった。タイトコントロール群は、便中カルプロテクチン≧250μg/g、CRP≧5mg/L、CDAI≧150、または前週のprednisone使用に基づき、標準コントロール群は、ベースライン時と比較したCDAI減少<100点/CDAI≧200、または前週のprednisone使用に基づいた。また、アダリムマブ毎週+アザチオプリン投与、もしくはアダリムマブ単独を毎週投与の患者で、治療失敗基準を満たさない場合はde-escalation(いずれもアダリムマブ投与を毎週→隔週に)が可とした。
主要エンドポイントは、無作為化後48週間の深部潰瘍を伴わない粘膜治癒(CDEIS<4)とし、intention-to-treat解析にて評価した。
クローン病のタイトコントロール群で粘膜治癒率は改善、有害事象は有意差なし
2011年2月11日~2016年11月3日の期間に、244例(平均[±SD]罹患期間:標準コントロール群0.9±1.7年、タイトコントロール群1.0±2.3年)が登録され、両群に122例ずつ無作為に割り付けられた。標準コントロール群29例(24%)およびタイトコントロール群32例(26%)が、有害事象等により試験を中断した。
48週時に深部潰瘍を伴わない粘膜治癒(CDEIS<4)に達した患者の割合は、タイトコントロール群が標準コントロール群よりも有意に高かった(56例[46%]vs.37例[30%])。Cochran-Mantel-Haenszel検定法を用いた補正後リスク差は16.1%(95%信頼区間[CI]:3.9~28.3、p=0.010)であった。
治療関連有害事象は、タイトコントロール群で105例(86%)、標準コントロール群で100例(82%)に認められた。治療関連死は発生しなかった。主な有害事象は、タイトコントロール群では悪心21例(17%)、鼻咽頭炎18例(15%)、頭痛18例(15%)、標準コントロール群ではクローン病の悪化35例(29%)、関節痛19例(16%)、鼻咽頭炎18例(15%)であった。
著者は、「CALM試験は、早期クローン病患者において、臨床症状とバイオマーカーの組み合わせに基づく抗腫瘍壊死因子療法の適時escalationが、症状のみの治療方針の決定よりも、良好な臨床的および内視鏡的アウトカムに結び付くことを示した初の試験である。さらなる試験を行い、腸損傷、手術、入院、障害などの長期アウトカムへの適時escalation治療戦略の効果を評価する必要がある」とまとめている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)