クローズドループシステムの人工膵臓の、長期使用の有用性が報告された。1型糖尿病患者を対象とした検討で、これまでのセンサー併用型ポンプ療法と比較して血糖コントロールを改善し、低血糖の発生は低く、成人被験者では血糖値の低下に結びついたという。英国・ケンブリッジ大学のHood Thabit氏らが、小児・青年25例と成人33例を対象とした12週間使用について検討を行い報告した。在宅療法としてのクローズドループシステムの人工膵臓の長期使用の可能性、安全性および有効性については、これまで確認されていなかった。NEJM誌オンライン版2015年9月17日号掲載の報告。
1型糖尿病、成人33例と小児・青年25例を対象に12週間使用を評価
試験は、被験者が自宅で自由に生活している状況下で、クローズドループインスリン投与法とセンサー併用型ポンプ療法を比較して行われた。
検討は、2件の多施設無作為化対照試験にて実施され、被験者は58例(小児・青年25例、成人33例)であった。
クローズドループシステムは、成人被験者には昼夜にわたって、小児・若年者被験者には夜間に使用。クローズドシステムを12週間使用し、センサー併用型ポンプ療法(対照)を同一期間使用し評価した。
主要エンドポイントは、成人被験者については血糖値が70~180mg/dL、小児・青年については同70~145mg/dLであった時間割合とした。
目標血糖値達成時間割合が11.0ポイント有意に増大
成人被験者において、目標血糖値達成の時間割合は、クローズドループシステム群67.7±10.6%、対照群56.8±14.2%で、クローズドループシステム群のほうが11.0ポイント(95%信頼区間[CI]:8.1~13.8)有意に増大した(p<0.001)。
また、平均血糖値は、クローズドループシステム群のほうが有意に低かった(差:11mg/dL、95%CI:6~17、p<0.001)。同様に、血糖値63mg/dL未満期間に関する曲線下面積(AUC)(39%低減、95%CI:24~51、p<0.001)、平均HbA1c値(差:0.3%、0.1~0.5、p=0.002)も有意に低かった。
小児・青年被験者では、目標夜間血糖値達成割合は、クローズドループシステム群が24.7ポイント(95%CI:20.6~28.7)有意に多かった(p<0.001)。
また、平均夜間血糖値は、29mg/dL(同:20~39)有意に低く(p<0.001)、昼夜血糖値63mg/dL未満期間に関するAUCは42%有意に低かった(95%CI:4~65、p=0.03)。
重度低血糖の報告は、クローズドループシステム群で3件発生した。1件は成人で、バッテリーの低下によるものであった。小児・青年群の報告例2件は第三者の支援を必要としたが入院とはならなかった。
(武藤まき:医療ライター)