生体弁で弁尖運動が低下、脳卒中・TIAリスク増大の可能性も/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/10/21

 

 大動脈生体弁の植込みをした患者について調べた結果、弁尖運動の低下が認められ、その発生率はワルファリンによる抗凝固療法を行った患者のほうが、抗血小板薬2剤併用療法を受けた患者に比べ低率であることが判明した。弁尖運動の低下は、抗凝固療法により改善することも確認されたという。米国・Cedars–Sinai Heart InstituteのRaj R Makkar氏らが、約190例の患者について調べ報告した。弁尖運動の低下は、脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の発生リスクを増加する可能性も示唆され、著者は「今回発見した所見の臨床的アウトカムへの影響について、さらなる調査を行う必要がある」と指摘している。NEJM誌オンライン版2015年10月5日号掲載の報告。

四次元立体レンダリングCT画像で弁尖運動の低下を判定
 今回の検討の背景には、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)後に脳梗塞を発症した患者について、CTにおいて大動脈弁の弁尖運動の低下が確認され、不顕性の弁尖血栓症の懸念が持ち上がったことがある。

 研究グループは、TAVR臨床試験の被験者55例と、TAVRまたは外科的大動脈生体弁植込み術を実施した患者に関する2ヵ所の医療機関の単独レジストリ登録者132例を対象に、四次元立体レンダリングCT画像データと、抗凝固療法、脳卒中やTIAを含む臨床的アウトカムに関する情報を得て分析を行った。

弁尖運動低下は抗凝固療法で改善
 結果、CT画像で弁尖運動の低下が認められたのは、臨床試験被験者55例中22例(40%)、患者レジストリ132例中17例(13%)だった。弁尖運動の低下は、TAVR・外科的植込み術ともに複数種の生体弁で認められた。

 弁尖運動低下の発生率は、抗血小板薬2剤併用療法を行った群では臨床試験群55%、レジストリ群29%に対し、ワルファリンによる抗凝固療法を行った群ではともに0%と発生率は有意に低かった(それぞれ、p=0.01、p=0.04)。

 被験者のうち追跡CT画像を撮影した患者において、抗凝固療法を受けた11例全例で弁尖運動の低下は改善したが、抗凝固療法を受けていなかった10例では同改善が認められたのは1例のみだった。

 弁尖運動の低下による脳卒中またはTIAの発生率については、臨床試験群では有意差はなかったものの、レジストリ群では、弁尖運動が正常な人では115例中1例に対し、弁尖運動低下が認められた人では17例中3例と有意に高率だった(p=0.007)。

(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)