心筋梗塞(MI)後で抗血栓薬と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与を受ける患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)投与は、消化管出血リスクの低下と関連することが示された。抗血栓薬、NSAIDs、PPIの種類にかかわらず関連がみられたという。デンマーク・コペンハーゲン大学のAnne-Marie Schjerning Olsen氏らが、同国入院患者データを分析し報告した。著者は今回の結果について、「観察非無作為化試験であり限定的である」としたうえで、MI後でNSAIDs服用を必要とする患者について、PPI投与はベネフィットをもたらす可能性があると述べている。BMJ誌オンライン版2015年10月19日号掲載の報告より。
抗血栓薬+NSAIDs服用MI後患者で、PPI服用時の消化管出血リスクを調査
MI後患者へのNSAIDs投与は、心血管リスクを理由に認められていないが、疼痛症状などを理由に広く使用されている。一方で、MI後患者には抗血栓薬およびNSAIDs投与と関連した出血合併症が認められているが、PPIの消化管出血リスクへの影響については明らかではない。
研究グループは、PPIの影響を調べるため、1997~2011年にデンマーク全病院からの入院レジストリデータを集約して分析した。30歳以上の初発MIで入院し、退院後30日時点で生存していた患者を包含。PPIと、抗血栓薬+NSAIDsによる消化管出血リスクの関連を、補正後時間依存的Cox回帰モデルを用いて調べた。
PPI非服用患者と比べて出血リスクは0.72
結果、抗血栓治療およびNSAIDs治療を受けるMI後患者それぞれにおいて、PPI使用による消化管出血リスクの低下が認められた。
単剤または2剤抗血栓療法を受けていたMI後患者8万2,955例(平均年齢67.4歳、男性64%)のうち、42.5%(3万5,233例)がNSAIDsを1回以上処方されており、45.5%(3万7,771例)がPPI投与を受けていた。
平均追跡期間5.1年の間に、消化管出血の発生は3,229例であった。NSAIDs+抗血栓療法における出血の粗発生率(イベント/100人年)は、PPI服用患者1.8、PPI非服用患者2.1で、抗血栓治療のレジメン、NSAIDsおよび使用PPIのタイプにかかわらず、PPI使用群における補正後出血リスクの低下が認められた(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.54~0.95)。
これらの結果について著者は、「観察非無作為化試験であり限定的である」と述べたうえで、「結果は、消化管リスクの有無にかかわらず、PPI投与が有益な効果をもたらす可能性があることを示唆するものである。また、MI後患者でNSAIDsを回避できないときは、医師はPPIを処方しても差し支えないことが示唆された」と述べている。